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代行サービス、運否天賦です  作者: 成城諄亮
第6生 高瀬隼哉
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第12話

 成り変わりの承諾をしてから1週間。自分は自宅近くにある喫茶店を訪れていた。この喫茶店を訪れる客は、その9割が常連であり、自分も、親父もその1人だ。でも今日は、初めての来店となる、仕事終わりの星野君と一緒だった。目的はお茶ではなく、成り変わりに関する話をするため。


「隼哉さん、何頼みます?」

「自分は、家帰ったらおふくろが作った夕飯があるから、カフェモカのSにしておくよ」

「カフェモカですか。いいですねぇ。僕はどうしようかな」


星野君はメニュー表を何度も見返して、唸り声を出す。時刻は16時半を過ぎたところで、軽食で済ませるか、がっつり頼むか、迷っているのだろう。


「お腹空いてるなら、ホットサンドとアメリカンコーヒーのセットがおススメだよ」星野君はハッとした顔を向ける。もしかしたらコーヒーが苦手だったかもしれない。そう思って、「コーヒーが飲めたらの話だけど」と言葉を添える。すると星野君はニコッと微笑んで、手を小さく振る。


「大丈夫です。コーヒー大好きなんで」

「なら、猶更おススメだよ。ここのコーヒーと料理の組み合わせは、ピカイチだから」

「じゃあ、今回は隼哉さんのおススメにします。ありがとうございます」

「ううん。じゃ、注文は、自分が」

「はい」


 メニューは早々に運ばれてきて、机の上が一気に華やかになる。


「早速、話しちゃってもいいですか」

「うん」

「まずは、成り変わり本体のことを説明します。僕が成り変わる対象は、依頼者様の人生そのもの、つまり、今回は隼哉さんの人生です」

「人生そのものって、生まれてから死ぬまで?」

「いえ。現在から、死ぬまでです」


星野君はコーヒーを口に含ませる。そして小さな声で、「うまっ」と呟いて、頬をゆるませる。


「でもさ、自分まだ30代前半だけど、死ぬまでって結構長くない? まあ自分がいつまで生きられるかなんて分からないけどさ」

「そこはご心配なく。成り変わったら、5年の月日が1日で過ぎ去るんです」

「そうなんだ」

「それと、成り変わって亡くなった後、僕は星野昇多として、現在の年齢まで戻ってくるので、そこもご心配なく。ふふっ、面白いでしょ。死んだとしても、何度も生き返られるんですよ」

「あ、ははは……」


苦笑いをして、自分はカフェモカを呑む。甘さとコーヒーのほろ苦さが絶妙にマッチしていて、何度飲んでも変わらない味に、どこかホッとする。ここには学生時代からよく通っていたが、いつも来る相手は親父か、もしくは自分1人。星野君をこの場所に誘うことは迷ったが、コーヒーの飲みっぷりと、ホットサンドを、大きな口を開けて美味しそうに頬張る姿を見て、正解だったと思った。また、来よう。


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