表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
代行サービス、運否天賦です  作者: 成城諄亮
第6生 高瀬隼哉
62/69

第11話

 目の前に座る星野君は、目の光を消して、ずっと自分のことだけを見つめる。背筋が次第に凍り始める。その視線にゾクッとする。


「どういう……、って!」星野君に言いかけた言葉を飲み込んで、「もしかして、星野君、転生できたりするのか!?」と、在りもしないことを口にする。そんな突拍子もない発言に、星野君は瞬きを2回して、ふふふと笑う。


「僕、隼哉さんが思われてるような転生はできないんですけど、成り変わりはできるんです」

「へっ、な、成り変わり?」

「はい。例えば、道端に死にかけの猫がいたとします。普通の人ならスルーするでしょう。でも、僕の場合は違うんです。その猫に僕が成り変わって、代わりに死んであげるんです。一方で、死にかけだった猫は、元気な姿でのこのこと歩いて帰る」


淡々と仮の設定状況をしゃべった星野君に対し、自分は脳内にクエスチョンマークが数個浮かんで、それと並行する形で首を傾げた。


「えっとぉ……、ん? いま、星野君って、ファンタジーの話でもしてる?」

「違いますよ。現実の話ですよ」

「げ、現実に、そんなことできる人が、いるのか!?」

「居ますよ。隼哉さんの目の前に」


口角をグイッと上げて、目を細めて笑った星野君。至純の心は、むさくるしい部屋で光彩を放つ。


「ゲームの世界だけじゃなかったとは……」

「そこですか、驚くとこ。他にもありますよね? ほら、例えば、猫に成り変われるんかい! みたいな」

「あ。悪かった」星野君の中途半端な突っ込み、そして自分の脳がゲームに支配されていることへの恥ずかしさから、俯きながら頭を掻く。


「それで、僕、今言ったみたいな感じで、人生の代行を仕事としてやってるんです。しかも、社長兼唯一の代行者って形で」

「なんか、ファンジー要素強いな……」

「そうですか? 僕はそう思いませんけど。ふふっ」


 何なのだろう。自分と星野君の違いは。性別は同じ、男のはずなのに。過去の経歴? それとも、純粋さ? 経歴は敵わないとしても、純粋さは、昔の自分なら勝っていたはずなのに。一体自分はいつから正常という道を外れたのだろうか。


「今日ここに来たのは、隼哉さんの人生を代行したい、っていうことを伝えたくて」

「はあ……」

「あれ、驚かれないですね」

「ゲーム、やり過ぎてるからかな……、ハハハ」


絶対に違う。驚いているはずなのに、うまくそのことを体現できない。驚きすぎているのか、出てくる言葉が拙くて、あっけなく消えていく。


「どうです? 隼哉さん。よろしければ、成り変わり、して、新しい人生を手に入れてみませんか?」


自分は二つ返事で承諾した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ