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代行サービス、運否天賦です  作者: 成城諄亮
第6生 高瀬隼哉
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第7話

 夏日が連日観測されるようになった6月。子会社に、親会社から3人の女性社員が派遣されてきた。人選は親父だったが、程よくバランスがとられていた。


「先月も話したように、親会社から派遣という形で、今月から3か月、日比野朱莉さん、川島美沙季さん、浅田萌さん、このお三方に、業務に加わっていただきます。お一人ずつ、簡単にご挨拶お願いします」


 親会社からいきなり派遣された先で、きっと不安なこともあるだろうに、派遣から1週間もすれば、3人は他の社員と変わらない対応量をこなした。ちょうど夏に向けた主力商品を販売したばかりということもあって、注文の電話が殺到していたため、派遣して欲しいと親父に頼んで正解だったと自分の中では安心していた。


3人の働きぶり、そして他社員が少し楽をできる点を考えると、このまま親会社を辞めて、そのまま子会社の社員になってくれればいいのに、と思いたくもなった。それは、3人はクレーム電話を受けるよりも、注文の電話を受けるほうが生き生きしているように見えたから。けれど、そんな安易な考えは通用するはずもなく、あっという間に3か月が経過し、3人は親会社へと戻り、新たな3人が派遣されてきた。


こんなことを繰り返すうち、中にはクレーム対応よりも、商品の注文を受ける電話対応のほうが楽だと言ってくれる人もいたし、逆に、商品の注文に関するだけの電話じゃなく、クレームの対応をする電話を受けてみたいという、子会社社員も現れるぐらいだった。自分からすれば、子会社から親会社に、研修という感じで数週間派遣するということをやってもいいと思えた。ひとつの世界しか知らないより、色んな世界を知っておいたほうがいいのは、確かなのだから。


そうしたこともあって、自分は社員の意見と自分自身の意見を、あらゆる方面からアプローチする形で親父に伝えてみるも、頑なに「それは駄目だ」と首を横に振り続けた。そしてそのことが、親父への不信感につながり、それが親会社、子会社関係なく社員全員にも伝播して、一部の社員が一斉に辞めていくという事態が発生。親会社からは3人が、子会社からは5人が辞めていった。


 このことがあって、子会社はそっくりそのまま、親父の知り合いが経営するショッピングサイトへの買収が決まった。ショッピングサイトが最近売り上げを急激に伸ばし、業績が安定しているという話は聞いていたが、まさか買収されるとは思っておらず、それに伴い、自分は社長という立場を追われ、再び親父の会社でお世話になることになる、はずだった。

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