表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
代行サービス、運否天賦です  作者: 成城諄亮
第6生 高瀬隼哉
57/69

第6話

 子会社の社長に就任してから1か月。社長業に就任して初めてのゴールデンウィークは、他の社員たちに休みを有効活用するよう伝え、それを実践してくれたお陰で、かえって自分は上手く休みを取れず、4月末に2連休を取ったのみで、それ以外は働くことになっていた。そんな休みの1日目、たまたま同じ日に休みを取っていた親父と共に家で昼から呑むことになった。親父は高級シャンパンを、自分は1杯目だけ付き合い、それ以降は梅酒をちびちび呑んでいる。


「どうだ、隼哉。社長業、ちゃんとやれてんのか?」まだ酔っていない親父は、シャンパンをグラスに注ぎながら問う。


「どうだろ。1人、思ってた会社と違うって理由で辞めたけど、自分に非があるわけじゃないし。まあそこそこ上手くやれてると思う」

「なんだ、もう辞めた奴がいるのか」


親父は、言わずもがな頑固な性格をしていて、今もなお、昔ならではの考え方に則った生き方をしている。そのため、最近の若者の行動がよく理解できないらしく、よく家で愚痴をこぼしている。それなのに表向きは社交性をアピールしていて、社員からはイケオジと慕われている。親父の二面性を知る自分からすれば、信じがたいことでもある。


「前にも言ったけど、多分親父泥酔してたから覚えてないんだろ」

「そうかもしれないな。何せ息子と飲む酒が一番うまいからな」

「それは嬉しいけど」


 幼少期から両親には褒められて育てられてきたが、30代半ばだというのに、未だむず痒いものを感じる。


「最近そういう新卒者が多いとは聞いていたが……。痛手だな」

「だから、あと2人ぐらい欲しいって思う。しかも、親父の会社から」

「構わんよ」

「え、いいの?」


親父はシャンパンを飲んで、グラスを静かに置く。自分は梅酒が残るグラス片手に、親父の目を見た。


「子会社までは一駅しか変わらないんだ。それに、ずっとクレーム対応するというのも、メンタルがやられるって声、度々耳にするからな」

「だね」

「そうとすると、問題は、誰を行かせるか、だな」

「それならさ、3カ月ごとの交代制にするのは、どう? 固定の社員だと、他の社員から敵視されかねないし、気分転換にもなるだろうし」


自分の提案に親父は腕を組む途中で、数度頷く。「そうだな」と。


「3人ぐらいなら出せると思うから、試しに再来月ぐらいからやってみるか」

「だね。親父、いつも色々ありがと」

「何ら問題ないさ。可愛い息子のためだ。ガハハハハ」親父は豪快に笑う。自分は残りの梅酒を飲み干した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ