表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
代行サービス、運否天賦です  作者: 成城諄亮
第2生 小笠原悠月
21/69

第10話

 総合病院のとある一室に入院している星野。薄明りの室内で、生命機器に繋がれた星野はベッドの上に座り、心臓の周辺を手で押さえながら、小笠原宛の手紙を書いていく。ベッドサイドのランプが灯す明かりはオレンジが強く、白い便箋を淡く染める。一文字ずつ大切に記していく星野。書き終わり、ペンを置くとともに軽く息を吐く。心臓はまだ生きたいと足掻いているようだが、先はもう本当に長くない。今朝、死期が見えたのだから。

   

 手紙を折り畳み、封筒に入れていく星野。最後にセロハンテープで封を閉じる。祈りを込めながら。


「よし、これでいける」


胸が騒ぎ始める。深呼吸を繰り返しながら徐に左手でスマホを取り、メッセージアプリを開く。その相手は田辺。最後に頼れるのは田辺しかいない。星野は悶えながら、文字をゆっくりと打ち込んでいく。呼吸が浅くなる。もう死ぬんだ。その覚悟とともに、呟く。「あとは頼んだぞ、田辺」と。


 星野はそのまま仰向けに、ゆっくりと後ろに倒れていく。機器のアラート音が鳴り響く。お別れを告げるみたいに。


   *


 小学校のグラウンドにて、同級生たちと騒ぎながら走っている小笠原。明るい笑顔を浮かべて。


拝啓 小笠原悠月様。病気が完治してから、いかがお過ごしでしょうか。お手紙を差し上げるのが遅くなってしまい、大変申し訳ございません。この手紙をもって、転生が成功したということを証明させていただきます。どうかご安心ください。私は死んでおりません。ピンピンしております。あのとき心配してくれてありがとうございました。君のその優しさは、きっと多くの人たちを救うことができると思います。結びに。どうか、お身体をご自愛くださいませ。そして、プロ野球選手になるという将来の夢を、どうか小笠原様の手でお掴みください。応援しております。 敬具 星野昇多  追伸 同封してあります書類の金額をお確かめのうえ、お支払いのほど、よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ