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第10話 リアラと散策

 私は今、冒険者ギルドで出会った女の子、リアラ・リーグレントと一緒にフェアリーステイルの町を散策していた。


 リアラはこの町に来て一週間ぐらい経つらしいから案内をしてもらっている。正直自分一人だったらさっさとこの町から出て十二時の魔女たちが居そうな場所を探すか、情報がありそうな王都リーシアンに戻っているところだった。


「着きました! ここが露店通りと言われている場所です! 手前は食べ物や飲み物、中間は娯楽系、奥は市場になってます!」


「へえー、今は市場が賑わってるね」


「そうですね、飲食物系もチラホラやってますが本番は夜からなので。あっ! 変な意味じゃないですよ! いや⋯⋯変な意味でもミーシャちゃんになら私は⋯⋯」


 自分の体を隠すようにリアラがリアラ自身を抱きしめ、私に寄りかかりながらいい匂いを嗅がせてアピールをしてくるが──


「それじゃあ露店通りちょっと歩こっか、昼食もまだ食べれてないし」


 私はそれを無視し、歩みを進めた。


「昼食なら私が責任を持ってお口まで運びます!」

「はいはい、とりあえず行くよ」


 そう言って私は無意識的にリアラの手を繋いでリードするような形になってしまった。


「押すのもいいけど、押されるのもいい⋯⋯!」


 リアラのことは気にせず私はどんどん奥へと進んでいく。意外と飲食物エリアが広く、中には営業を開始している露店もあった。


「あれ食べませんか?」


 リアラが指を指した先には黄色い看板で見るからに目立っている露店が一つ。


「暖かい国で育ったパイナンという甘い果物だそうですよ」


「ちょっと気になるかも」

「なら買ってきますね!」


 急ぎ足でリアラは私の手を離し、パイナンが売っている派手な露店へ行ってしまった。


「ええちょっ! ⋯⋯私も一緒に行くのに」



 それから三分もしない間にリアラは私の元へ戻ってきた。一本の棒に刺さった果物を一つ持って。


「これどうぞ」

「ありがとう、リアラの分はどうしたの?」


「それが珍しい食べ物だったこともあり人気で、ラスト一個だったんです」


 リアラは何故か涙ぐみながらも私に話し、「冷たいうちに食べてください」と言ってくれた。


「あーん⋯⋯うんうん、美味しいよ」

「それなら良かったです」


 ミーシャちゃんが美味しいって言ってくれて嬉しいけど、やっぱり好きな人と美味しいものを共有できないのが一番辛い⋯⋯。


「リアラも食べる?」

「いや、それはミーシャちゃんのだから⋯⋯」


 そう言って首と手を同時に横に振るリアラ。


「いらないんだ、リアラの大好きな人との間接キスにあーんのおまけ付きなのになぁ⋯⋯」


 少しの沈黙を経て俯きながらもリアラは口を開き、それと同時に口角が少し上がっているのも目に見えてわかった。


「すみません⋯⋯」

「ん、なに?」


 適当に返事をするとリアラは私の方を見て、「分かってるでしょ」と言わんばかりの膨れっ面を見せてくる。


「⋯⋯私にも一口ください」

はなから私は独り占めなんてしないよ。はい、どうぞ」


 パイナンをリアラの口元まで持っていって直接食べさせてあげると、私の知っている満面の笑みを取り戻してくれた。


「幸せ⋯⋯」


 普段は変なとこあるけど大人しくしてたら可愛いんだよなぁ⋯⋯。



 二人で一つの冷やしパイナン食べ、更に奥へ進んでいくと市場が見えてきた。かなり多くの人が集まっており、今からその人混みの中へ入っていくと思うと憂鬱な気分になってしまう。


「はぐれたら案内できませんし⋯⋯手、もう一度繋いでもいいですか⋯⋯?」


「甘やかすのはもう終わり」

「Sっ気のあるミーシャちゃんも好き⋯⋯!」

「ちゃんと案内してよー」

「もちろんです!」


 市場エリアに入ってすぐ目の当たりにしたのは、片手で持てそうなぐらい小さな謎の生物が、ふよふよと浮遊しながら買い物をしている姿だった。


「リアラ、なにあれ?」

「ラッキーですね! この町でだけ稀に見ることが出来る妖精です!」


 あれが妖精か⋯⋯ん? なんか緑のオーラ纏ってない? 妖精なら普通なのかな。



 更に歩いていくと衣類や雑貨、食材などが売られていた。私たちはそれらを横目に歩みを進めていると、商人の方と目が合ってしまった。


 とても無愛想で夢も希望も無いみたいな顔をして私たちを鋭い眼光で睨んでくる。商品の剣や盾を見ると、どれも粗悪品で売れ残っていた。

 商業を営む人のことはよく分からないけど、店主の顔を見る限り、相当な上下関係が築かれているか、はたまた横取りされているのか。もしかしたら店主の目利きが悪いって可能性も──


「見てくださいこれ!」

「⋯⋯なんだその服は」


 急にリアラが私の前であてがった服は胸元とお腹が大きく空いているおかしな服なのにも関わらず、よく見てみるとかなりの値段で売られていた。


「可愛くないですか! でもこのサイズじゃ胸がちょっとキツイですかね?」


 宿屋のお風呂で少し大きくなった自分の胸を見てたころの私に見せてあげたい、上には上がいるんだってことを。


「よし、買います!」

「ちょっと待ってリアラ、なんのために買うの?」


「そりゃあミーシャちゃんが私に興奮してくれるように⋯⋯てもう! 言わせないでください!」


 恥ずかしそうに顔を赤くして私に擦り寄ってきてるけど、別にそういうつもりで言ったわけじゃ⋯⋯。


「リアラが女の子好きなのは分かったし、口出しする気もないけど⋯⋯その相手が私なのね?」


「好きってずっと言ってますよ!」


 正直どうすればいいのかわからん、何せ私は魔法学校でもほぼ一人だったし、普通の恋愛もしたことないのに、いきなり女の子から好意を寄せられている。


「と、とりあえずその服を着る機会なさそうだから買わないでおこっか⋯⋯そもそもサイズあってないし」


「よくよく考えてみたんです、そしたらサイズあってないほうが胸も出てミーシャちゃんの欲を満たせるかなと!」


 私は思わず頭を抱えた。この子の頭の中はピンク色の花でいっぱいだ、そして本当に凄腕の魔法使いなのかと疑ってしまう⋯⋯だって何この子! 私には理解できない考え方だよ⋯⋯。


「ほんとにもう⋯⋯」

「⋯⋯えへへ」


 市場の散策をし終えた私たちはリアラおすすめのお店で昼食を済ませたあと、用事があるとリアラが言い出したので一先ず解散となった。


 このまま別の町に行こうかなと思いつつも、さすがにそれは可哀想なので、以前から少し興味のあったファードの森を空から見に行こうと思う。

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