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七話. 使い方は大事

訓練場にて、ブラス、ラキ、キビヤの三人はマルボルの指導のもと、戦闘訓練を行っていた。

一対一の体術訓練が終わり、四人は少し長めの休憩をとっていた。ブラスとラキは満足そうに息を切らしながらも元気にしており、キビヤは疲れきって地面に突っ伏していた。マルボルは息を整えつつ、何かを待っているようだった。

「お疲れ様です、マルボルさん。組手終わりました?」

「あら、キビヤくんはだいぶおつかれね。」

四人のいる訓練場にハイトとアリアがやってきた。

「ライブル三位、ピアーモ十位、お疲れ様です。先程終わりました。」

マルボルは二人を見るとすぐに敬礼をした。

「お疲れっス!」

「おつかれーでーす。」

ブラスとラキも倣って敬礼をした。キビヤも急いで立ち上がった。

「お疲れ様です。」

「あら、意外と元気ね。」

すぐに立ち上がったキビヤを見てアリアは感心していた。

「マルボルさん、敬語はやめてくださいよ。じゃあ次の訓練始めようか。ラキ、おいで。」

「はーい!」

ハイトが手招きすると、ラキは元気そうに走ってハイトの元に向かった。

「ブラスは引き続き俺とだ。」

「はいっス!」

マルボルの声に反応し、ブラスはマルボルに近寄った。

「キビヤくんは私とね。」

「え…?」

アリアはキビヤの元に歩き、もう終わりだと思っていたキビヤは驚いて静止していた。

ハイトとラキ、マルボルとブラス、アリアとキビヤ、二人一組の固まりになり、距離を取る形になっていた。

「じゃあ始めようか。」

「ラキスラァーッシュ!」

「おっと!」

ハイトの合図で、ラキはすぐにハイトに向かって風刃を放った。が、ハイトはその風刃に向かって手のひらを向けると、その風刃は消えた。

「なかなっ!?」

「ラキキィーック!」

「あぶないなぁ。」

ハイトの背後からラキが風を纏った脚で飛び蹴りをするが、ハイトは軽く避けた。

ハイトとラキの戦闘が始まり、それを見ていたキビヤの肩をアリアが叩く。

「こっちもやるわよ。とは言っても、あんなガチガチの戦いやるわけじゃないけど。」

「はい、お願いします。」

キビヤはアリアの方に向き直った。

「キビヤくんの課題は制御と持続ね。あとは水以外を咄嗟に使えるようにしようか。」

「はい。」

「制御と持続は後回しにして。土の術式はどこまで覚えてる?」

「基礎的な術式は全部覚えてますけど、咄嗟にやるのは難しいです。」

「偉いわね。じゃあ風は?」

「風も火も同じです。」

キビヤの返答にアリアは驚いたような顔をしていた。

「なんで?!」

「なんでって、軍校で習うじゃないですか。確かに卒業試験の戦闘では水しか使ってないですけど。」

「いや、凄いわよそれは。普通自分のよく使う魔術以外うる覚えになるし。」

「でも、アリアさんも覚えてますよね。」

「そうね…。ブラスくんが覚えてると思う?」

「…。」

キビヤはブラスが火以外の有属性魔術をつかっているところを見たことがなかった。

「そういうことよ。ブラスくんは極端な例だけど、大体の魔術士は自分の得意なもの以外はあまり覚えてないことが多い。ラキちゃんも大体は覚えてるだろうけど、使い勝手の良い魔術以外はたぶんちゃんとは覚えていないわ。ルークは別だけどね。」

ルークは天才であり秀才である。二十五という若い年齢にして上位魔術士であり、魔術に関する知識も膨大である。それはキビヤも知っていた。

「まあ基礎覚えてるなら、あとは使う属性ね。」

「はい。」

「キビヤくんが得意なのは水で、後衛での戦い。だから重くて援護に長けてる土が良いと思うわ。」

「重い?」

キビヤは首を傾げた。土は確かに重い印象があるが、それと水や後衛の話が繋がらなかった。

「四属性あるのは知ってるわよね?その特徴は?」

「名前通りじゃないんですか?」

「まあそうだけど…。そっか軍校だと使い方はやるけど、細かいことはやらなかったけ。さっきも言った通り土は重い。それは魔力の質に関することなの。」

「質ですか。」

「そう。簡単に言うと密度。風が一番軽くて土が一番重い。そして、火は風の次に軽くて、水は土の次に重いの。軽い方が攻撃に向いていて、重い方が防御に向いてる。でも、近距離向きなのは風と土、そして中距離向きなのは火と水になる。ブラスは火の制御が上手いから近距離でも戦えてるけど、理論上火は近距離には向かない。これは性質上の話だけど、その性質は制御のしやすさにも関わってくるの。」

「制御のしやすさですか。つまり、風属性が得意なラキ先輩は火も同様に近い感覚で制御ができるけど、水が得意な僕は風の制御は難しく感じるってこと、ですか?」

「そういうこと。とは言っても属性による攻撃や防御の向き不向きは使い手の得意属性によっても違う。だからまずは土属性を使えるようにした方が良いの。」

「わかりました!」

キビヤは納得がいってスッキリした顔になった。

「基礎は全部覚えているようだから、まずは土の壁ね。やってみて。」

「はい…、ほいっ!」

キビヤがゆっくり地面に手を付くと、キビヤの前に土の壁が生えた。

「うん、基本通りの土壁ね。小さい。」

「大きくするってなると、強度の維持が難しくて。」

「魔力配分は?」

「慣れてないんで形の維持の方に多く使ってます。」

「魔力で補填するのは望めないわね。」

「術式も大きくはできますけど、その分時間がかかりますし。」

「そうね。土壁の術式の原理は覚えてる?」

「自分の周囲の土を集めて、それを壁にする、です。」

「そう。だから土壁を大きくしようとすると必然的に集める範囲を広げることになって、結果的には術式が大きくなる。範囲が大きくなるってことは術式に入れる魔力量も必然的に多くなる。」

「はい。」

「だから効果範囲を下に広げれば良いの。」

「効果範囲を下に?…上位魔狼の攻撃防いでくれたやつですか?」

「そう。自分のいる位置は下に下がる分、集められる土の量が多くなる。効果範囲を平面に広げるよりも効率的に集められるのよ。」

「はぇー、改めて考えてみるとその通りですね。」

「でも自分の位置が下がる分、上から攻撃された時の逃げ場がなくなるけど、平面からとる分と下からとる分の土の調整を上手く行えば…?」

「自分の位置と元の地面の段差を緩やかにできて、逃げ場を作れるってことですか。」

「そういうこと。あとの調整は自分次第よ。上手い割合を見つけるまでは反復で練習ね。」

「はい!」

キビヤは土壁を作っては崩し、作っては崩してを繰り返し始めた。

「あぶないっ!!」

「およっ?!」

突然火の球が物凄い勢いで飛んできて、キビヤは咄嗟にその方向に土壁を作った。

「あっ!」

キビヤの壁は粉々に壊れた。

キビヤに火球が当たる直前キビヤの目の前に水の柱が立ち、火球を消した。

キビヤは緊張の糸が切れ、座り込んだ。

「焦った…。今のは?」

キビヤはアリアの方を見た。アリアは何もしていなく、呆れた様子でブラスを見ていた。

「ごめんっス、キビヤ!」

ブラスが放ったようで、ブラスはキビヤが無傷な様子を見て安堵していた。

「すまんなキビヤ。ブラス、集中しろ!」

「はいっス!すんません!」

キビヤはもう一度アリアの方を見た。

「なんですか、今のは?普通の火球より速かったように見えたんですけど。」

「今のは火球に風の制御術式を組み込んだものね。火球は遠くに飛ばすのに向いてないの。だから風で火球の安定性をあげたもの、を練習してるみたいね。」

「はぁ。では、火球防いでくれた水の柱はアリアさんが?」

「そうよ。今のは良い反応だったけど、全体的な強度が足りてないわね。」

「すみません。とりあえず感覚は覚えましたけど…。」

「じゃあ次に移るわよ。土球を出して。」

「土壁はいいんですか?」

「とりあえず今日は自分でも練習できるようにするだけよ。土球出して。」

「はい。」

キビヤが手のひらを上に向けると、土の球が出来た。

「じゃあそのまま維持して。」

「えっ…。はい。」

キビヤはしばらくそのまま静止していた。

「何時までですか?」

「他の訓練終わるまでよ。それまではそうね、しりとりでもしましょうか。」

「…はい。」

「りんご。」

「ごま。」

アリアとキビヤのしりとりが始まった。その間キビヤは土球を出し続けていた。

途中、キビヤの土球の形が変形した。

「あっ!ぎべっ?!」

その瞬間アリアがキビヤの頭に手刀を喰らわした。

「もう一度同じの出して。」

「…、はい。」

キビヤは怯えながらも土球を出した。

キビヤの土球の形が少しでも変わると、アリアの手刀がとび、またキビヤが土球を生成する。

その繰り返しであった。

「じゃあ終わりー。今日は特になんもないからシャワー浴びたら自由に帰っていいよ。アリアとマルボルさんは訓練内容と気づいた点をまとめたものを提出したら帰って良いですよ。三人も自分で何が出来て何が出来なかったか自分なりにまとめときなよ。お疲れー。」

「「「お疲れ様でした!」」」

ハイトが訓練場を出ていくのを、全員が敬礼をして見送った。

「じゃあラキちゃんシャワー浴びに行こっか。」

「はーい!」

アリアとラキは仲良さそうに出ていった。

キビヤは疲れきって、地面に突っ伏していた。

「大丈夫スか?」

ブラスがキビヤに歩み寄り、手を差し出した。

「大丈夫です。ありがとうございます。あれ?マルボルさんは?」

キビヤがブラスの手を借りて起き上がり、周りを見渡すと、マルボルは既に訓練場にいなかった。

「俺に鍵預けて先にシャワー浴びに行ったっス。」

「そですか。ブラス先輩、余裕そうですね。」

「いや疲れたっスよ。マルボルさんきびしーっスから…、あっ、それはハイトさんもアリアさんも一緒っスね。めちゃくちゃ殴られてたっスもんね。」

「いや、ほんと…、疲れました。」

いかがだったでしょうか。


コメントや評価、お待ちしております。


批判や誹謗中傷は怖いので、なるべく優しい言葉でお願いします。


誤字脱字がありましたら、優しい言葉で教えていただけると素直に感謝します。




次回の投稿は6月21日(金曜日)の21時50分(午後9時50分)の予定です。


予定が変わった場合はX(旧Twitter)で告知しますので。フォローお願いします。




どうぞお楽しみに。

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