二十八話. やっぱり火は熱い
ケイマン、メービス、エレシアの三人は二人の青年と対峙していた。
「メービスくん、青髪の子頼める?」
「了解です。」
「僕は赤髪の子やるから。エレシアはメービスくんのカバーをお願い。」
「はい。」
「一人で平気すか。」
「たぶん…。」
ケイマンは周りを一瞬見渡した。
「加勢はなさそうだね。本気でやるよ。」
「そうですね、行きます。」
メービスは青髪の青年に突っ込んだ。青髪の青年はメービスに短剣を振るった。
「あれ?」
しかし、目の前に走ってきていたメービスの姿が突然消えた。
「こっちか!?」
「ちっ。」
青髪の青年は後ろに短剣を振った。メービスは後ろから剣を振るっており、二人の剣が重なった。
「ふんっ!」
「やらせないよっ!」
赤髪の青年がメービスに剣を振ろうとした瞬間、ケイマンの剣がその剣を抑えた。
「よっと。」
「ぐっ!」
ケイマンは青年の剣を流しながら、青年の腹に蹴りを入れて飛ばした。
「やっぱり君は力強いね。」
「だろうな。だが、それだけじゃねぇ。」
「?…っ!?」
赤髪の青年が口を開くと、そこから炎が放たれた。
「炎か。」
ケイマンがそれを避けると、赤髪の青年はすぐ目の前に迫っていた。
「ふんっ!」
「くっ、あつっ?!」
赤髪の青年の剣は炎を纏っていて、ケイマンは剣でそれを止めたが、炎の塵がケイマンを襲った。
ケイマンはすぐに剣を離して距離をとった。
「逃がさない!」
「おっと、あついなぁ。」
赤髪の青年は炎を纏った剣を次々とケイマンに向けた。ケイマンは熱がりながらも、剣を打ちながら青年の攻撃を避けた。
「ここまでかな。」
「!?」
突然、青年の視界が白く染まった。青年はすぐにケイマンから距離をとった。
「なんだ今の…。」
「やるねぇ。でも、火は僕にとって都合が良いねぇ。」
「どういうこと…?」
青年が周りを見ると、二人の周りには霧がかかっていた。
「霧…、水の魔術か。」
「そういうこと。」
「水は熱で蒸発する。」
青年の纏う炎に霧があたり、青年を白い水蒸気が包んだ。
「くっ、がっ?!」
突然青年の身体に何かが刺さり、青年は血を吐いた。
「くそ…。」
青年の身体に刺さったのはケイマンの剣であった。
「視界を失ったら防御に全力を注ぎながら聴覚や感覚を研ぎ澄ます。そうしたら君はもう少し生きていたかもねぇ。」
青年は倒れた。倒れた青年の身体から剣を抜き、ケイマンはその剣で青年の首を切った。
そして、安堵したように息を吐いた。
「さて、もう一人はどうなったかな。」
一方で、メービスは青髪の青年の短剣と打ち合っていた。青年は楽しそうに口を開く。
「凄いなお前!」
「どうも。」
一見対等に打ち合っているように見えるが、青年はメービスの動きを捉えきれていなかった。
青年がメービスの剣を止める、その次の瞬間にメービスは青年の死角に移動しており、そこからメービスが剣を振る。それに反応し青年がメービスの剣を止める。その繰り返しであった。
初めは楽しそうにしていた青年であったが、淡々と繰り返すメービスを捉えられないことに苛立っていた。
「ふんっ!」
「?!」
青年の身体から炎が放たれ、メービスはとっさに距離をとった。
「炎…。」
青年は炎を体に纏ってメービスを見た。
「こっからは本気でいくよっ…?!」
突然青年の身体が動かなくなった。青年が足下を見ると、そこには円形の白い光があり、青年はそれを踏んでいた。
「終わり。」
「はがっ!?」
メービスは戸惑う青年の首を切り落とした。
「助かったよエレシアさん。」
「いえ、すみません。時間かかり過ぎました。」
「十分だよ。こいつ無駄に速かったし。」
「それを翻弄してたメービスさん凄くないですか?」
「僕はズルしてたしね。」
「あっ、ケイマンさんは!?」
「いるよ。」
メービスはエレシアの隣を指さした。エレシアはその指の先をなぞるように隣を見た。
「やあ。」
「わっ!?…いつの間に?」
「いや今来たとこ。こっちも終わったっぽいね。」
「ケイマンさんは余裕そうですね。」
「相性良かったからねぇ。」
メービスの言葉にケイマンは笑顔で答えた。
「おー。終わったみたいだね。」
余裕そうなハイトの声が聞こえ、三人はハイトの方を見た。
ハイトの前の男は血を流しながら膝をついていた。
「あんたら強いな。流石は魔術士団ってとこか。噂通りの強さだな。」
「いや、あなたも強いよ。私でなければ抑えられなかった。」
「そうか。そりゃ相手が悪かったな。」
「だね。投降してくれるかな?」
男は青年たちを見た。ハイトがその視線に気づく。
「悪いね。君含めた幹部以外は基本殺す任務なんだ。」
ハイトの言葉に男は笑った。ハイトはそれに首を傾げた。
「何が可笑しいんだ?」
「相手が悪かった、って言ったろ?レデール!ブルット!」
男の叫び声に反応するように青年たちの身体が浮き上がった。
ケイマン、メービス、エレシアはすぐに反応し、ケイマンは赤髪の青年、メービスとエレシアは青髪の青年の死体の方に向かった。
「無駄だ。」
ケイマンとメービスが青年たちの身体を切ろうとした瞬間、青年たちの身体は光の粒となった。
光の粒は男の身体に吸い込まれるように男へ向かっていった。ハイトは斬り伏せようと、男に駆け寄った。
しかし光の粒子はそれより早く男の身体に触れ、突然男の身体が爆発するように光り、ハイトはその光に吹き飛ばされた。
「ハイトくん!」
「ライブル三位!」
ケイマンとエレシアは飛ばされたハイトに駆け寄り、ハイトはすぐに起き上がった。
「大丈夫、飛ばされただけ。今のは熱かった、ってことはまた火の魔術だろうけど…。」
三人が男を見ると男の身体は更に大きくなっていた。
男の後ろにメービスが現れ、剣を振りかざしていた。
「遅い。」
「?!」
メービスが剣を振るより先に、男の手がメービスの顔を掴んだ。
「うらっ!」
メービスはそのまま地面に叩きつけられた。
「悪ぃな。力が入りすぎちまった。」
男はゆっくりとメービスの顔から手を離した。その瞬間、ハイトが手から勢い良く水を放ち、その水は男に当たった。が、その水は一瞬で消えた、
男は何事も無かったかのようにハイトの方を見た。その瞬間にケイマンは倒れているメービスを抱えて男から離れた。
「大丈夫?」
「なんとか…、くそ痛いですけどって、後ろ!」
「えっ?あら。」
ケイマンが後ろを見ると、男が二人の方に走ってきていた。しかし、男は急に止まり、男の目の前を白い光線が通った。
男がエレシアの方を見ようとした瞬間、ハイトが男の背後に移動し、剣を振った。
「もらっ?!」
「ふんらよっ!」
男は斧を片手で振り、ハイトの剣に当て、ハイトごと吹き飛ばした。
その瞬間を狙ったかのようにエレシアは両手を再び男に向けた。が、その先に男はいなかった。
「死ねや!」
「え…?!」
エレシアが驚きながら声のした後方を見ると、男が斧を振りかざしていた。
「ふんらっ!」
「よいっと。」
ケイマンが男の前に入り、剣で男の斧を流し、直ぐに剣を返して男へ剣を振った。しかしその剣は男の手によって止められた。
「うそん。ぐぶっ!!」
「きゃ!?」
男はケイマンを蹴り飛ばし、飛ばされたケイマンに押される形でエレシアも飛んで行った。
「こんなもんか?…!」
突然、男を囲むように四本の土の柱がはえた。土の柱から無数の土の槍のようなものが男に向かい、男の身体を突き刺した。
「がはっ?!」
男は血を吐きながらもハイトを睨んだ。
「ごめんね。ここまでやるつもりはなかったんだけど、あなたは強い。だから、少し本気でやらせてもらった。これでも死なないとか本当に人間?」
「…どうだろうなぁっ!」
男は無理やり身体を動かし、ハイトに向けて斧をぶん投げた。
「あぶなっ。よいっと、重っ?!」
ハイトは回転する斧の柄を持ったが、斧の重さに振り回されよろけた。
「おっとっと。あっ。」
斧を下ろして顔を上げると目の前に男の拳があった。
「わっ、ぶ?!」
ハイトはとっさに拳を避けたが、男は身体を回転させながら回し蹴りをハイトへ決めた。
「いったいなぁ。」
ハイトは少し転がり、すぐに起き上がり男の方を見た。
男の身体は血だらけで、息が上がっていた。
「そろそろ限界では?」
「るせぇよ…。魔術士団ってのはお前みたいな化け物ばっかりなのか?」
「私は三位なので上澄みだとは思う。でも、化け物って程ではないよ。」
「そうか。」
男はそう言いながら腰の小袋に手を入れようとした。しかし、その小袋に手が届くことはなく、小袋は地面に落ちた。
「花狂薬だろ?飲ませないよ。」
「…。」
男の周りには男を囲むように黒い柱が八本建っていた。
「なっ?!」
黒い柱から黒い鎖が無数に伸び、男を拘束した。
「こりゃ逃げることすら無理だな。」
男は諦めたように笑った。
「あんた器用だな。これ闇の属性だろ?あさっきのは風、んでその前に土。一対一の時と気を引くのは水。四属性使うとか魔術士団チート過ぎねぇか?」
「出すぐらいなら誰でも出来るよ。」
「使うのは誰でもは無理だろ。」
「そうだね。とりあえず眠ってもらうよ。話は後で聞く。」
ハイトが男の前に手を置くと、男は目を閉じ眠った。
「終わったぁ?」
見計らったかのように、ケイマンがのんびりとした様子で歩いてきた。
「終わりましたよ。二人は?」
「エレシアにメービスくんの治癒お願いしといた。もう少ししたら来るんじゃない?」
「エレシアの傷は?」
「僕に押されて一緒に飛ばされただけだからねぇ。切り傷ぐらいだったから僕が治してメービスくんの方に向かわせたんだよ。治癒に関しては彼女の方が得意だし、それに、派手に吹き飛んだからこっちに意識向かなかったから。」
「やっぱりわざとですか。」
「いやいや、避けたらエレシアに直撃してたし。」
「優しいですね。」
「ハイトくんなら勝てると思ったのもあるよ。普段から組んでるメービスくんならまだしも、僕とは最近組むことなかったし、エレシアに関しては組むの初めてだから、変に協力するよりは一人の方がやりやすかったでしょ。」
「まあその通りですけど。ケイマンさんとなら即興でもどうにかなったと思いますよ。」
「買いかぶりすぎだよ。この人強いし。」
ケイマンは拘束されている男の方を見ながら言った。
「そうですね。たぶん本気出されたら私も危なかったと思いますし。」
「それは謙遜し過ぎじゃない?」
「いえ。本当に危なかったと思います。とりあえず伯爵はヤキーフさんたちに任せておいて、私たちはこの人の監視ですね。」
「眠らせたんでしょ?」
ケイマンの言う通り、男が動く様子はなかった。
「何があるかわかりませんから。」
「…、そうだね。」
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