二十二話. 平凡な才能でも才能は才能だよね
俺は昔から非凡な才能に憧れていた。
軍校に入学する前までは、自分は世界を変える力を持っている。そんなことを本気で思っていた。
同学年には非凡な才能を持つ者たちが溢れていた。
俺も非凡な才能を持つ者たちの一人だと思っていた。
けど、それは思い上がりだった。
全ての才を持ったお調子者。戦闘の才に溢れた自分に厳しい者。隠密の才に溢れた他人を大切にする者。
その三人は別格だった。
非凡な才能を持つ者たちもその三人の前では平凡な才能に見えた。
その三人に追いつくために俺は努力をし続けた。しかし、非凡な才能を持つ者たちも努力をしていた。
その結果、俺は何者にもなれなかった。
非凡な才能より輝く平凡な才能はない。平凡を非凡だと信じたところで、平凡は非凡にはならない。平凡は平凡なままだった。
才能と努力は比例しない。
それを認めたくない俺は努力をし続けた。
そんな平凡な俺でも、愛した人がいた。
少ない給料から生活費を切り詰め、その人のために使い続けた。
非凡な才能がなくとも、平凡な才能しかなくとも、俺はその人だけを見ようとした。
でも、その人は俺じゃなくてあいつを見ていた。
非凡なお調子者。
あいつは俺より不真面目で、努力もしていない。
あいつと俺の違いは才能。その違いだけをあの人は見ている。でも他は俺が持っている。
だから俺を見てくれるまで待とうと決めた。待っている間も俺は努力し続けた。
決めたことはやり通す。それだけは平凡な俺でもできたことだった。
非凡なお調子者は俺の愛した人と交際した。
俺の愛した人は優しい人だった。だから俺と二人で会うことをやめた。
それでも俺は待った。努力すればどうにかなると思っていた。
それから一年経ったある日。非凡なお調子者と俺の愛した人は結婚した。
招待された結婚式には行かなかった。
俺が愛した人が誰かと愛し合い、永遠を誓うところは見たくなかった。
その数ヶ月後、俺は除隊した。
引き留める者はいなかった。
非凡な才能を持たない者を引き留める者はいない。
才能と努力は比例しない。
努力しようとも、結果の出ない者は見られることもない。
軍校時代、教官が言っていた。
「努力できることは才能である。」
しかし、結果が出なければ、努力は才能にはならない。
「努力はいつか何かの形で実を結ぶ。」
いつかって何時だ?何かがこれか?
除隊と同時に冒険者登録をした。
軍では平凡な才能であっても、軍人で魔術士団所属だった。その経験があれば活躍できると思った。
けど、ここでも非凡な才能にはなれなかった。
俺は永遠に平凡だということがわかった。
俺は努力することを諦めた。
ある時、仕事先で非凡な人に出会った。
非凡な人は言った。
「俺の元へ来い。お前の才能を活かしてやる。」
扱われる才能があることは知っていた。しかし、扱われる才能は相性の良い扱う才能の元でしか活かされない。
扱われることで咲く才能。扱う才能と扱われる才能は相性があり、その人に扱われる才能が俺にはあった。
その人のおかげで俺は、非凡な才能になれた。
その人のやることが悪い事だとは知っていた。けど、それを知っていたとしても、俺の才能が認められていた。それが嬉しかった。
俺の才能を認めてくれた人のために、俺は全うすることを決めた。
それが例え、自分を犠牲にすることになっても…。
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【2024/8/30追記】
二十三話、今日の21:20に投稿しました。
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