十二話. 仕事は最後まで
カブラーン王国テセント州南東、シワの森の西の洞窟、その南側。
ラダイにより盗賊のリーダーヴィスコが倒された。
その後、ハイトを含め他の隊員も集まっていた。
洞窟の出口からメービスを先頭に、キーノ師団長を始め、数人の第七師団隊員が入ってきた。
「ライブル小隊の皆さまお疲れ様です。盗賊の連行は私たちがしますので。」
「わかりました。」
キーノの言葉にハイトは頷きながら立ち上がった。
「キビヤ、もう動ける?」
「はい!ラダイ先輩とルーク先輩に手当してもらったのでもう全開です。」
「そりゃ良かった。そういえばヴィスコ以外に強かったやついた?私とラキのところは雑魚ばっかりだったけど。」
ルークとメービスは首を振った。
「俺たちのところもそんな感じです。」
ルークの言葉にハイトが頷き、ラダイとキビヤの方を見た。ラダイが口を開く。
「そうですね、私たちのところにはヴィスコともう一人…、そういえば第七師団のみなさん、出口から誰か逃げませんでしたか?ヴィスコに一人逃がされてしまいまして…。」
キーノが口を開く。
「いなかったと思いますが…。そもそもこの洞窟は包囲しているので逃げ道もあまりないとは思うのですが…。」
「逃がしたってなると厄介ですね。」
キーノの言葉にハイトは微妙な顔をしていた。キーノも頷く。
「そうですね。ただ逃げただけなら良いのですが、逃がしたってなるとそうはいかないでしょう。ヴィスコともう一人は何か言ってましたか?」
キーノがラダイを見る。
「いえ。逃がした直後戦闘に入ったので特には。」
「そうですか。ヴィスコ含め他の盗賊の話も聞かないといけないですね。」
キークは納得したように頷いた。
「ただ、南は確定じゃないかと思います。ヴィスコと二人でこちらに走ってきたので。」
「ほう…。確かに。そうですね、こちらからもそう報告します。良い部下を持ってますね、ハイト三位。」
「ありがとうございます。」
ハイトは嬉しそうに頭を下げた。
キビヤは首を傾げながらルークの方に寄った。
「どういうことですか?」
「南に敵の本拠地があるって話だよ。」
「なんでわかるんですか?てか本拠地って…。」
「私も知りたーい。」
ラキも寄ってきた。
「ヴィスコは南から逃げた。なんでだと思う?」
「南ならバレてないと思ったんですかね?それか南の制圧…はないか。僕とラダイさんはヴィスコ以外相手にしてないし。」
「うん。バレてないが正解だと思う。中央の部屋から三方に伸びる通路、その中でも南はあまり使われた形跡がない。それはいざという時の逃げ道にしたということ。そしてヴィスコは部下を逃がした。これはここが本拠地じゃないってこと。ここが本拠地なら部下を逃がす判断はしない。二人で戦った方がただ逃げるだけなら確率は上がるし、部下がリーダーであるヴィスコを置いてさっさと逃げるのも有り得ない。」
「それだと南に本拠地ある理由にならなくない?」
ラキが不思議そうに言った。
「なるんだよ。敵から攻められて逃げるとき、なるべく安全に逃げるには敵に見つからずに早く別の場所に移動することが大切になる。そして、恐らくバレてないと思っていた南から逃げたこと。これらから推測すると、南は本拠地に一番近い、そして、それを悟らせないために南はほとんど使わなかった。」
「なるほど。」
キビヤは納得して頷いた。
「やっぱり頭良いねルーク先輩!」
「ラダイ先輩の「南」って言葉から推測しただけだよ。それにメービスちゃんはわかってたよね?たぶん。」
ルークはメービスの方を見た。
「まあそこまで深くは考えてなかったですけど、ラダイさんの一言で確信しました。」
「だよね。てかそれって追ってるやつだったってこと?」
「たぶん、はい。」
「あらま。」
ルークは少し嫌そうな顔をした。
「さてさて、帰るよー。」
ハイトとラダイが四人の方へ歩いてきた。
「もういいんですか?」
キビヤは不思議そうに言った。キーノを始め、第七師団は忙しそうにしていた。
「平気だよ、私たちの仕事のほとんどは終わってるから。とは言っても、私は調査のために残らなくちゃいけない。あと、メービスも。」
「うえぇー。」
「はい、嫌そうな顔しないで。私もさっさと帰りたいんだから。じゃあルークは三人を連れて帰って。ちゃんとした報告は私が帰った時にするけど、軽くでいいからラダイと一緒に報告しといて。」
「はい。」
「じゃあ、おつかれ〜。」
「「「お疲れ様です。」」」
ルークを先頭にラダイ、ラキ、キビヤの四人は歩き出した。どさくさに紛れてメービスもついて行こうとしていた。それを見たハイトはメービスの頭を捕まえた。
「何帰ろうとしてんの?」
「いやー、疲れたから帰りたいなーって…。」
「今日地図作っただけでしょ。ありがたいけど、君の実力だとあれは簡単だよね?」
「それはルークさんも…。」
「怪我してるラダイにラキとキビヤ押し付けるのは酷でしょ。」
「…はい。」
メービスは諦めたようにハイトについて行った。
「調査って何するんですか?」
「これの回収。」
ハイトは紙を取り出し、メービスに見せた。
「紙?術式書いてある…これは魔力弾ですよね?無理じゃないですか?」
「それが発動出来たっぽいんだよね。メービスのところのやつ使ってなかった?」
「あー、ルーク先輩が速攻で眠らせたんで。戦闘してないです。」
「相変わらずの効率重視だね。」
「発動できたって、威力は?」
「下位レベルはあったかな。」
「花狂薬と言い、その紙と言い、めんどくさいですね。」
「ほんとそれ。ま、調べるのはうちの隊じゃないだろうけど。」
「第十二大隊ですかね。」
「とりあえずはそうだろうね。でもこういうのは第三大隊のクルトくんが得意だから、クルトくんにも協力してもらうことになるだろうね。」
「そうですね。」
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