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十話. 紙は便利

カブラーン王国テセント州南東、シワの森の西の洞窟。

魔術士団第六大隊ライブル小隊と中央軍第七師団の合同任務が行われる。

ハイトとラキは洞窟の西に着いた。

「ラキ、剣抜いておいて。」

ハイトは腰から剣を抜き、洞窟に目をやったまま言った。

「はーい。」

「なるべく相手の手足を切るように。危なかったら首を狙って。」

「首狙っていいの?捕縛じゃないんですか?」

「基本は捕縛。だから手足狙って。首は最後の策。」

「わかったー。」

ラキは納得したように剣を抜いた。

「じゃあ行くよ。」

そう言いながらハイトは腕を上に挙げた。

「任務、開始!」

ハイトがそう言うと同時に、ハイトの手の先から魔力の球が放たれた。その球は上空に上がり、弾けた。

パァーンッ!

轟音が鳴り響くと同時にハイトとラキは洞窟に向かって走り出した。

音に気づき、盗賊らしき男が三人慌てて出てきた。

「なんだてめ?!」

一人の男が睨みを効かせようとハイトたちを睨もうとした瞬間、その男の足はハイトによって切られた。

「ぐあぁぁぁ!?」

男はバランスを崩し、痛みに叫びながら転んだ。

「敵襲だぁー!!」

男たちは叫びながらハイトたちに向かって行った。

「ラキラキー、パァンチッ!」

ラキは剣を持っていない右手に風を纏い、男を殴った。

「ぐぶぁっ!?」

男の腹にパンチが決まり、男は吹き飛ばされた。

「くっ、てめぇ…っ!」

残りの一人の首元にハイトが剣を向けた。男は冷や汗をかきながら止まっていた。

「君たちのボスはどこだ?」

「ヴィスコさんのことか…?」

ハイトは男を睨んだまま頷いた。

「言えば見逃してくれるんだな?」

「わかったから早く言え。なるべくわかりやすく。」

「洞窟の奥だ…、真っ直ぐ行けば大きい部屋にぶつかる。その部屋かその奥の部屋だ…。」

「ありがとう。」

「これで…?」

パチンッ

ハイトは左手の指を鳴らした。すると、男は意識が飛んだように膝から崩れた。

「よし、行くよ。」

「はーい。」

ハイトとラキが洞窟の奥へと入ろうとすると、奥から出てきた盗賊の男たちが道を塞いだ。

「あいつらの服装、魔術士団だ!」

「魔術のエリートが…舐めんなっ!」

男たちは紙束のようなものを取り出した。

「なんですか?あれ。」

「たぶんあれは…。」

突然男たちはそれぞれ一枚の紙を前に出した。すると、その紙から魔力弾が放たれた。

「あぶなっ。」

ハイトが手を前に出すと、魔力弾はハイトとラキに届く前に離散した。

「撃て撃て!」

男たちは次々と使った紙を捨て、新しい紙を取り出し、そこから魔力弾を放った。

ハイトは手を出し続け、男たちの放った魔力弾は離散していった。

「ラキ。」

「はーい。」

ラキは左手を握った状態で前に出した。

「ラキショットォ!」

ラキが手を開くと同時に大きい風の球が放たれた。

「う…うぎゃぁぁぁ?!」

ラキの放った風球は男たちの放った魔力弾を弾き、男たちを吹き飛ばした。男たちは壁に打ち付けられ、意識を失った。

「弱くない?」

ラキは首を傾げながらハイトを見た。ハイトは男たちの落とした紙を拾っていた。

「まあ、普通の部隊だと危なかったかな。この術式の紙、よく出来てるよ。使い捨てなのがもったいないけど。」

「普通の紙じゃないの?」

「普通の紙だと魔力弾レベルの術式は発動できないんだよ。発動できても火を起こしたり程度で攻撃力の高いものは発動する前に紙が消えちゃうんだよ。普通の紙でも使えるんだったら魔術士団以外にこの戦法使わせるけど、あの威力はなぁ…。」

「ふーん。」

ハイトは何枚かの紙を自分のバッグに入れた。

「ルークに調べさせてみよう。じゃあ先に進むよ。」

ハイトとラキは奥に進んで行った。

その後も数人の盗賊が二人の行く手を塞ごうとしたが、二人は難無く盗賊たちを倒し、先に進んだ。

「ここが奥の部屋かな。」

二人は一際広い部屋へと着いた。

ラキは周りを見渡して不思議そうにしていた。

「いないよ?もしかしてさっきの中にいた?」

「いや、それはないと思うけど…。」

ハイトとラキが考えていると、ルークとメービスも部屋に入ってきた。

「お疲れ様でーす。ヴィスコ見つかりました?」

ルークが悠々とした態度で言い、メービスはノートに何かを書きながら歩いていた。

「いや、いない。ということは…、予想通りかな。」

「そうですね。」

ハイトの言葉にメービスが頷き、ルークは少し心配そうな顔をしていた。

ラキが首を傾げる。

「予想って?」

「ヴィスコはたぶん南の方から逃げた。」

「南って、ラダイさんとキビくんのところ?」

「そう。ラダイとキビヤを組ませといて正解だったな。私たちも急いで南に向かうよ。メービス、ここの地図は出来た?」

「出来ましたよー。ところどころ変な術式あって見にくかったんで、ちょっと正確性が心配ですけど。」

「変な術式?…術式は何個?」

「四個…かな?」

メービスはハイトに地図を見せた。

「洞窟の四方か…。私は術式の解除に向かう。ルークは二人を連れてラダイたちのところへ。途中に一つ術式あるから出来ればそれの解除を頼む。すぐに解除できそうになかったら放置でいいから。」

「はい。」

「じゃあ地図見て最短で南に向かって。」

ハイトはすぐに洞窟の奥へと走っていった。

三人もルークを先頭に、メービスの案内のもと、走り出した。

ラキは真剣な目をしているルークを見て不思議そうに口を開いた。

「ヴィスコって人そんなに強いの?」

「そだねー…、最低でも中位かな。」

「最低?ってことはもっと強い可能性あるの?」

「うん。最低でも中位のレベルを有してるってこと。火を使うってこと以外はあんまよくわかってないけど、強いのは確かかな。」

「ふーん。ラダイさん大丈夫なの?てか、キビくん死なない?」

「火を使うって情報が出てるってことは、他のも使う可能性はあるけど、火を主体として戦うスタイルってことだと思う。だからラダイ先輩もキビヤちゃんも相性は良いと思う。それに、あんま問題ないと思うよ。ラダイ先輩だし。」

「そーなの?」

ラキはメービスの方を見た。

「まぁ…ラダイさんは強いし。ルークさん、そろそろ。」

「ん、了解。」

「たぶん、そこの横道っぽい窪み…?」

メービスが指を指したところはただの壁であった。

「あれ?ここであってると思うんだけど。」

「あってるよ。」

ルークは壁に手をかけた。すると、手のつけたところから壁が消え、奥に術式の書かれた岩が置かれていた。

「おー!」

ラキは驚きながら感心していた。

「これは随分粗末な術式だけど…、威力重視かな。」

ルークが岩に手を置くと、岩は一瞬光った。

「よし。行くよ。」

ルークが手を放すと、岩から術式は消えていた。

「はやーい!すごーい!」

「はいはい、ありがと。メービスちゃん、また案内お願い。」

「はーい。」

三人は再び、洞窟の南を目指して走り始めた。


時は遡り、ハイトが合図を放った直後。

ラダイとキビヤは洞窟の南から入り、中を進んでいた。

「誰も来る気配ないですね。」

キビヤは奥を見渡しながら言った。

「たぶん敵が多い、というか、敵のほとんどはハイトさんのところでそょうね。あそこから出入りするのが多く確認されてますから。」

「そうなんでしょうけど…、この道、なんかすごい歩きにくいというか、使われている形跡があんまりないような感じしますけど。」

キビヤの言う通り、二人の歩く道は踏み固められた様子もなく、灯りも最低限であった。

「まぁ、ここまでは予想通りですね。…この音は?」

「来る?!」

ラダイとキビヤの行く先から、二人の方に走ってくるような音が聞こえた。

「なんだてめぇら!?」

二人の男が走ってきた。若そうな方の男が前を走っており、ラダイとキビヤを見て驚き、止まった。ラダイとキビヤは反射で剣を向けた。

「ちっ、こっちにもいんのかよ。どうします?ヴィスコさん。」

後ろから走ってきた男、ヴィスコも止まった。

「こりゃやられたな…。っても、あっちよりはマシなはずだ。てめぇはあのガキの方をやれ、俺は優男っぽい兄ちゃんの方をやる。」

「うっす。」

ラダイは落ち着いていた。

「ですって。ご指名みたいですよ。」

「余裕ですね、ラダイ先輩。というか僕十八歳!一応大人!」

「そこなんですよねぇ。相手を決めるのは良いと思うのですが…ね。」

キビヤはラダイから聞いた事のない、怒気のこもったような低い声に驚いて、ラダイの方を見た。

「私の後輩に対して、ガキは許せませんよ?」

ラダイは笑顔だった。口角も上がっている。しかし、謎の迫力が、その顔から滲み出ていた。

いかがだったでしょうか。


コメントや評価、お待ちしております。


批判や誹謗中傷は怖いので、なるべく優しい言葉でお願いします。


誤字脱字がありましたら、優しい言葉で教えていただけると素直に感謝します。




次回の投稿は6月28日(金曜日)の21時40分(午後9時50分)の予定です。


予定が変わった場合はX(旧Twitter)で告知しますので。フォローお願いします。




どうぞお楽しみに。

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