第4話
第4話
「だめ、この責任は取ってもらう」
意外と強情だな。
「あーもー、埒があかねぇ! 俺が佐倉さんのとこまで連れ帰る」
そう決心し、立ち上がると。
「そんな勝手、母さんは許しません!」
バーンと襖を開き、隣で聞き耳を立てていたっぽい家族総出で仁王立ちされる。
「な、なんなんだよ」
「よく聞きなさい頼崇。外へ出してもデキる時にはできるのよ?」
「お兄ちゃん出しちゃった婚するの?」
出しちゃった婚なんて初めて聞いたぞ妹よ。できちゃった婚な? いや、できちゃいないけども。
「こんな一途で可憐な美少女、お前にはもったいない。男なら責任を取れ頼崇!」
壮大な誤解をしているようだ。
「勘違いすんな! ちゃんと聞いてたか?」
言ってて気づいた。聞いていた「だけ」だからこその勘違い。アニメやラノベでよくあるヤツだコレ!
「所々しか聞いてないけど十分よ! このお嬢さんはねぇ、あんたを頼って来たの、不安だったでしょう?」
「その所々「以外」が重要なんだよ!」
都合の悪い部分は無視されるとこまでがテンプレ! 変態女を庇うようにバカ両親が寄り添って俺を睨んでいる。
「ほんと、俺の言ったこと聞いてた? 俺のウンコ手づかみする女だぞ」
「うわ、俺のウンコって……お兄ちゃんサイテー」
両親側へ付いた妹の顔は、中学に上がってから親父へ向ける時と同じ表情だった。まぁ、これを機に兄離れしてくれればそれもいいか。
「頼崇! お前ってヤツはどんな上級者プレイをっ」
その表情をさらに歪ませ親父を睨む愛子。
「こんな儚げで清楚な子がそんな事するわけないでしょ! ねぇ?」
「シナイ……ヨ?」
なんで疑問形なんだよ、ウソ下手だな!
「ちょっと二人で話しさせてくれ」
4対1じゃ分が悪い。不本意だが、俺の部屋で彼女と話すことにした。
「はぁー。朝から疲れるなぁ……」
ベッドの端へちょこんと座る彼女を見下ろし、額に手をあて弱々しく頭を振る。何も知らなかったら「理想のレイカさん」だ。インパクトが強すぎて、この変態女の事情は何一つ知らないんだよなぁ。知りたくもないけど。だが、これ以上こじれるのは困る。ここでハッキリさせねば。
「ヨリ太くん。悩み事?」
「キミが原因でね」
「隣り、座るといい」
他人事のように無表情でベッド横を小さくポンポンするレイカ。
「で、ヨリ太くんって何?」
「ヨリタカは呼びにくい。ヨリ太なら、私が引き篭もってた時観たアニメの主人公みたいで呼びやすい」
俺、メガネかけてねぇけどな。
「私の事は「レイカちゃん」でいい。お風呂も好き……ダヨ?」
ほんと、ウソ下手だな。
「じゃぁレイカな。変態女と呼ばないだけ感謝しろ」
あと、風呂は毎日入った方がいいぞ。
「ん。レイカでいい」
彼女がポンポンとする右手から、一人半ほど距離をとって俺もベッドに腰を下ろす。
「って、がっつり座布団がわりにしてるの俺のマクラじゃねーか!」
短いスカート丈にギリギリ隠れて見えないが、今は俺の頭ではなく、見た目超美少女の尻がダイレクトに沈み込んでいることだろう。
「なかなかの弾力、フランス製」
コイツは引き篭もり中に何作アニメ観たんだ。
「いいから、その尻をどけろ。いやいや、そんな所へ挟み込むな!」
腰を浮かし、今度はケシカランふとももに圧迫された俺のマクラはその大きさからスカートを押し上げる形となった。
「よく見たら変なシミある。私?」
俺のヨダレだよな!? だよな!
「もうそこ置いておけ。話進まねぇ」
「嗅いでいいよ」
顔赤らめて差し出されましても。
「誰が好き好んで尻の残り香嗅ぐんだ。あと、そんな「意外」って顔でビックリされても! ほんと、話進まないから」
差し出されたマクラは尻の接触面を下にしてレイカから離れた位置へ隔離する。また座られるのもいやなので、折りたたみの簡易テーブルを出し、対面に正座させて仕切り直す。
「どっから聞けばいいもんかなぁ」
頭をかいて人間的にツッコミどころ満載の美少女をどう崩すか考える。