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貴重な資源と道路工事

 あれから数日間、探索した甲斐があった。大自然の中は資源の宝庫だ。

 見たことがない木の実が実っている場所もあれば、薬草がたくさん原生している場所もある。

 僕達は地図を作りながら、少しずつ全体図を明らかにしていった。発見したのは栄養価満点のウラカカの実をつけた木々。

 怪我や病気に効く薬草の草原。そしてたくさんの魚介類が生息する湖と奥にある滝。

 ただ密林といっていいほど自然に覆われていて、気軽に行ける場所じゃない。そこで僕達はそれぞれの場所までの道を作ることにした。

 

「ユウラ。まずはここからまっすぐ土を掘り起こして」

「たぁっ! たぁっ!」


 ユウラに鍬で荒れた地面を掘り起こしてもらう。邪魔な石や木をどかしつつ、僕は魔石を生成した。


「魔石生成……。硬魔石」


 ブロック状にした硬魔石を柔らかくなった地面に敷き詰めていく。

 綺麗になった魔石畳みの道を見れば、まるで町の中にいると思えてくる。 

 うんうん、僕ながらすごくいい出来だ。


「ユウラちゃん。俺達も手伝うぞ」

「うん」


 集落の人達も手伝ってくれて、作業はかなり捗った。ただ一つ問題なのは魔物だ。このまま作業が進めば森の中にまで入っていくことになる。

 毎日、この作業をやるにしても一日当たり大体徒歩で5分ほど歩ける道しか出来ない。ウラカカの実がなる場所までの道が徒歩で3時間。

 薬草の草原まで2時間半。湖までがなんと5時間。それに僕の魔力の限界もある。

 さすがに一日中、ブロックを作っていたらばてるのはしょうがない。いずれ馬車なんかも通れるようにしたいから、道は広く作っているから余計に時間がかかる。

 でも皆ががんばってくれるおかげで、少しずつだけど完成に近づいていく。

 そんな中、集落の女性達が手分けしてお弁当を作って持ってきてくれた。


「リオ君。お姉さん達、こんなことくらいしかできないけど食べてみてね」

「あ、ああっ、ありがとうっ……ございます!」

「なんで泣くの。大げさよ」

「だって、優しくされるのが……嬉しくて……」

「セレイナさんが張り切ってくれたおかげよ」


 セレイナさん、さぼってるように見えて率先してお弁当作りの指揮をとってくれたみたいだ。それに魔物討伐も率先してやってくれる。

 栄養バランスなんかも考えてくれて、すごくおいしい。おかげでウラカカの木の群生地まで半月で開通。

 魔物の襲撃があってヒヤッとさせられたけど、ユウラとセレイナさんの敵じゃない。

 この道を有効利用するなら、いずれは魔物をどうにかしないと。


「ウラカカの実っておいしいわねぇ」

「セレイナさんがモリモリ食べてる……」

「モリモリ」

「いや、口で言わなくても」


 当然のようにモリモリと実を丸かじりしている。

 セレイナさんによると、栄養価がかなり高くて市場に出せば高値がつくらしい。ピンクと白の実で絶妙に甘酸っぱい味がしてすごくおいしいからね。

 魔物に荒されてひどいことになってるけど、急いで硬魔石で壁を作る。果樹園の入口にも扉を生成してきちんと管理できるようにしておいた。

 それから薬草の草原まで10日。


「グリーンハーブにイエローハーブ、レス草……。薬草の宝庫ね。よく荒されないで残ってたものね」

「草食の魔物がいなかったのかな? でも僕、薬草なんて煎じたことないなぁ」

「その辺は今後の課題ね」


 ここも念のため、硬魔石で壁を作って安全を確保。今は無理だけどいずれ管理者なんかも立てないとなぁ。

 これで怪我や病気なんかにある程度、対応できる。

 それから湖まで一ヵ月。それぞれ硬魔石を敷き詰めた立派な道ができた。


「この湖、なんて名前だろう?」

「ほとんど手つかずの辺境の地だから、誰も名前なんてつけてないんじゃない?」

「じゃあ、何かいい名前ないかな……」

「リオ湖なんてどう?」

「なんとなく言うと思いましたけど却下です」


 リオ湖なんて嫌だよ。ここは魚が泳いでるのが見えるくらい水が透き通ってる。

 だけどどんな魔物が生息しているかわからないから、今は入らないでおこう。

 ウラカカの木、薬草の草原、湖。二ヵ月足らずでついに全部、開通した。


「やったぁーーー! やったよ! 皆! できた! ついに! でっきたぁ!」

「子ども」

「ユウラ! もっと喜んで!」

「わっ……」


 ユウラの両手を握って思わず大はしゃぎしてしまった。

 ハッとしてユウラを見ると固まって動かない。顔が赤い。あれ?


「ユウラ?」

「バカ!」

「えぇ!?」


 ユウラにバカって言われた。どうして? あ、勝手に手なんか握ったら迷惑か。

 いけない、いけない。はしゃぎたいのは僕だけじゃないはず。集落の人達が拍手してくれた。


「リオ君。君という奴は……」

「おじいさん! 皆さんのおかげです!」


 おじいさん達も手伝ってくれたし、何より今回の道のおかげで薬草が簡単に手に入るようになった。

 畑でも育てられるかもしれない。怪我をした時なんかに助かるし、もう夢しか広がらない。

 本当に少しずつだけど集落が満たされていくのを感じた。


「お姉さん達もセレイナさんも本当にありがとう!」

「無事、開通……。ということなら、おめでたね」

「おめでた?」

「冗談よ、じょーだん!」


 おめでた? セレイナさんが他の女の人達に叩かれてる。

 優秀な人だけどたまに何を言ってるのかよくわからない。

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