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85話 教室でも大好き

 週明け。学校の授業は普段通り終わったけれど、透にとっては針のむしろだ。


 なぜなら、あの愛乃・リュティと透が付き合っているという噂は瞬く間に学校中に広まったからだ。


 もともと食堂で透と愛乃が一緒に昼ごはんを食べていたところも目撃されている。そのうえ、放課後の図書室では、愛乃の「わたしと子どもを作りたいって言ったくせに!」なんて発言も聞かれていた。


 トドメは、二人でデートしているところを同学年の女子・秋川古都香にも目撃されたことだ。


 彼女のせいで透と愛乃が親しい間柄だと校内中に知れ渡ってしまっている。


「こんなに注目されるなんて思ってなかったのに」


 愛乃は困ったように笑う。

 今、放課後の教室で透と愛乃は向き合っていた。透の席の前に愛乃がわざわざおしゃべりにやってきたのだ。


 この行動が噂をさらに裏付けてしまっている……。


「まあ、愛乃さんは学校一の美少女ってことで有名だからね。今まで男と付き合ったなんて話もなかったし」


「そうそう。透くんが初めて、なんだよ?」


 愛乃が身をかがめ、「内緒♪」という雰囲気で耳元でささやく。

 心臓がどくんと跳ねる。


 そう。透は愛乃にとって初めての交際相手ということになる。

 

(いや、形だけの婚約者であって、正式に付き合っているわけではないのだけれど……)


 とはいえ、あとは透の決断次第だった。

 愛乃が透に好意を持ってくれているのは明らかだ。


(告白は、俺からしないと)


 今でも、透は本当に愛乃の力になれるのかはわからない。

 愛乃を守れず、傷つけてしまうかもしれない。


 それでも透は愛乃と一緒にいたいと思った。

 あとは、知香、それと明日夏との関係が問題だ。


 教室の隅に座る明日夏をちらっと見ると、明日夏はぷいっと顔をそむけてしまう。

 ご機嫌斜めみたいだ。


「桜井さん、きっとわたしたちに嫉妬しているんだよね」


「そうだとすれば……申し訳ないな」


 透はつぶやいてしまう。明日夏はずっと透のことを好きでいてくれて、なのに透は気づかなかった。

 愛乃は透の目を覗き込む。


「本当は、今、透くんの目の前にいたのは、桜井さんだったかもしれないんだよね?」


 以前は明日夏はときどき透の席に遊びに来ていた。「打倒近衛知香!」の作戦会議ではあったわけだけど、それは透にとっても楽しい時間だったと思う。


「わたしは桜井さんに感謝しないとね」


「え? なんで?」


「だって、もし桜井さんが透くんに告白していたら、わたしが入り込む隙間なんてなかったんだもの」


 言われてみれば、それはそうかもしれない。明日夏に告白されたら、透はどうしただろう?

 たぶん、透はその告白を受け入れていたと思う。


 透にとって、明日夏は大事な友人で、魅力的な異性だった。そんな明日夏が透を付き合いたいと言ってくれるなら、断る理由もない。

 そうして、徐々に透は明日夏を好きになっていったかもしれない。


 けれど、現実にはそうはならなかった。

 愛乃が透の婚約者となったから。


「だから、わたしは桜井さんに感謝しなくちゃ。そして……ごめんなさい、桜井さん」


 愛乃は小さくつぶやいた。

 その声は明日夏には届いていない。でも、直接伝えることは決してできない内容だ。


「世の中には叶えられなかった祈りがたくさんあるんだよね」


 愛乃の言葉の意味が、透にはわかった。

 かつて透は知香を守りたいと願った。けれど、その祈りは叶えられなかった。


 同じように、透は明日夏の願いに応えることができない。

 

「それでも、わたしは透くんを独り占めしたいの」


 愛乃は独り言のように小声で言った。

 そこにクラスメイトの女子三人がやってくる。見た目が派手な、スクールカースト上位の女子だ。


「ね、ね、リュティさん! 連城くんとつきあっているってホント!?」


 クラスメイトたちは授業中も昼休みもみんな気になって仕方ないという雰囲気だったが、牽制しあって直球では聞いてこなかった。

 その壁を破って、彼女たちは透たちに向かってきたわけだ。さすがギャル。


「ううん、違うよ」


 愛乃が満面の笑みであっさりと否定する。透はちょっと驚いた。たしかに正式に付き合ってはいないけれど、みんなの前でそういうことにするかと思ったのだ。


「だって、わたしと透くんは婚約者だもの」


 愛乃は次に爆弾発言をした。女子たちはみんなあっけにとられる。


「こ、こんやくしゃ……?」


「知らない? 結婚を約束している人のこと」


「そ、それはわかるけど、高校生で婚約なんて珍しいなって。リュティさんは納得しているの?」


「もちろん。だって、わたしは透くんのこと、大好きだもの」


 愛乃は顔を赤くして、でも、はっきりとそう言った。








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