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ホルモン

三巻出すために予約してください!!!!!

「ロウリュ?」


「そうそう。フィンランド語なんだけどね。フィンランド式サウナで水をサウナ石にかけるの。それで発生した蒸気が『ロウリュ』」


「へえ……というかすごく熱いような」


 壁にかけてあったうちわのようなもので、愛乃が蒸気をかき回す。

 すると熱波が透にもあたり、ぶわっと汗が出る。


 透が目を白黒させていると、愛乃はそんな透を可愛いものを見るような目で見た。

 とても楽しそうだ。


「ふふふっ、透くんがびっくりしてる……」


「こんなサウナ、初めてだし……」


「そっか。透くんは初体験なんだ」


 初体験、という部分を愛乃が艶めかしく発音する。絶対わざとやっている気がする。

 透は肩をすくめた。


 かなり熱いけど心地よい。柑橘系の香りは、石にかけた水に混ぜてあるアロマらしい。

 穏やかな気分になる。


 それは愛乃が隣にいるからかもしれない。

 愛乃はふたたび透の横に腰掛けた。あぐらをかく愛乃もちょっと新鮮で、汗をかいて「ふうっ」と息を吐く愛乃が色っぽく見える。


 お尻のラインとか白い太ももとか、つい意識してしまう。

 ちらっと愛乃も透を見る。そしてくすりと笑う。


「透くんも汗たっぷりだね」


「そりゃこれだけ暑ければね……」


「ロウリュはすごく汗が出るの。サウナは暑さだけじゃなくて、蒸気も大事。銭湯にある遠赤外線のサウナとかだと温度が一定だけど、こうはいかないから」


 とくとくと愛乃が豆知識を語る。


 それにしても、愛乃は全然熱くなさそうな顔をしているが、透はそろそろ限界だった。

 心臓がどくんと跳ねるのを感じる。


「透くん……そろそろ出る?」


「いや、愛乃さんは平気そうだし……」


「わたしは慣れているから。でも、透くんは無理したらダメだよ?」


 愛乃が純粋な青い瞳で透を心配するように見つめる。

 たぶん、愛乃の言う通りなのだろう。そろそろ出た方が良さそうだ。


 透は素直に婚約者の忠告に従うことにした。

 サウナ室を出ると、空気が爽やかに感じる。


 でも、これで終わりではない。


「み、水風呂に入るんだよね?」


「入ったこと無い?」


「冷たく感じて入れたことがないんだよね……」


「ロウリュの後ならたぶん平気だよ。普通は汗を流さないといけないけど……貸し切り施設だから問題ないみたい。このまま入っちゃおうっか」


 愛乃はえいっと水風呂に足を踏み入れる。

 二人分ちょうど肩を並べられる広さだ。


「息を止めずに、呼吸しながら入ったほうが安全だよ」


 愛乃に言われた通り、透もこわごわと足を踏み入れる。さっきまでのロウリュしたサウナが熱すぎたせいか、透も平気でざぶんと水風呂に入れてしまう。そのまま肩までつかった

 愛乃がくすくすっと笑う。


「ちゃんと入れたね。偉い偉い」


「なんか子供扱いしていない?」


「いつもはわたしが透くんに子供みたいに甘えてばかりだもの。たまには逆もやってみたくて」

 

 愛乃がいたずらっぽく笑う。

 急速に身体が冷えてくる。最初は入れたけど、ちょっと冷たすぎるかもしれない。


 水着姿の愛乃が突然、ピタッと透の横にくっつく。


「あ、愛乃さん!?」


「こうしたら少しは温かいかなって。どう?」


「そ、そりゃそうだけど……」


 水着越しにお尻のあたりが密着している。意識させられるけれど、冷たさでそれどころではない。


 そろそろ出た方が良さそうだ。

 透が立ち上がると、愛乃は「残念……抱きつこうと思っていたのに」なんて小声でつぶやく。

 隙あらば透にアプローチしようとしてくるので、油断できない……。


 二人はそのまま露天風呂もある屋外へと出た。

 そこには二人で寝転がれるスペースがある。


 ほっとして透は寝転がった。愛乃も隣に寝そべった。

 さすがに愛乃も「ふうっ……」と息を吐くと、目をつぶって大人しくしていた。


 やっと一息つける。 

 

(すごく心地よいな……)


 愛乃の言う通りにしたら、気持ちよく入れた。さすがサウナに慣れているだけのことはある。

 そのまま目をつぶって透は、ぼうっと身を横たえた。屋外の風が心地よい。


 なんだか愛乃に対して抱いていたエッチな気分が消えて、穏やかな感情が身体を支配する。

 愛乃をちらりと見ると、愛乃も無防備にスタイル抜群の身体をさらしていた。

 胸の膨らみがはっきりとわかり、お尻のラインも艶めかしい。


 慌てて透は目をそらした。これでは元通りだ。

 だが、目をつぶると、すぐにまた落ち着いた気分に戻る。


 サウナはエロい気持ちを消す効果があるのかもしれない。

 ところが、それから数分後。


 ツンツンと脇腹をつつかれ、その直後、透はぎょっとした。

 愛乃が透にまたがっていたからだ。

 

 目を開けると、透の目の前に愛乃の顔があり、大きな胸がゆさゆさと揺れている。


「とおるくーん」


 甘えるように愛乃が言い、頬をスリスリする。


「ちょ、だ、ダメだって! 愛乃さん!?」


「女の子はサウナに入ると、オキシトシンっていうホルモンが出てね……えっちな気分になるんだって」


「そ、その豆知識はいらないかもしれない」


「ちなみにオキシトシンは赤ちゃんに母乳を出すためのホルモンなんだよ……」


 切なげに愛乃がささやいた。





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