58話 新妻はどちら?
愛乃と知香と同じベッドで寝て、透は最初、ほとんど眠れないかと思った。
なにせ愛乃は寝ぼけて「透くん……大好き」なんてつぶやいて、透に抱きつき、その大きな胸を押し当てていた。
知香は知香で「透……可愛い」なんて寝言をつぶやきながら、透の身体をずっと撫で撫でしていた。
二人とも無防備に寝てしまっていて、美少女のサンドイッチ状態だったから眠れるわけない。
しかも、愛乃にいたっては、「透くんに襲われるのも覚悟しているよ?」なんて寝る前に言っていたし、そういうことをすることをどうしても想像してしまう。
たとえば、寝ている間に愛乃の胸を触ったりしても、愛乃は怒らないだろう。むしろ、愛乃は透にそうされることを望んでいる。
もちろん、純粋に透に好意を持ってくれている面もあるとは思う。
ただ、愛乃は、透との婚約をより確実なものにするために、既成事実を作ってしまいたい。
それがわかっているからこそ、透は愛乃に手出しなんてできなかった。
二人の婚約は、愛乃を助けるための手段で、いまのところ恋人のフリも偽装なのだから。
知香も透のことを好きだと言ってくれているけれど、新しい婚約者ができるという話もあるし、知香とそういうことをするのは論外だ
でも、現に二人はベッドの上で透に抱きついていて……。
透は悶々としていたけれど、やがて慣れてきたのか、ようやく二時間近く経って寝ることができた。
☆
翌朝。窓からの光で透は目を覚ました。
今日は休みだから、慌てる必要はない。二度寝しようかと思ったら、透はもぞもぞとした感触を覚えた。
(……なんだろう?)
そして、気がつく。愛乃が透の身体に抱きついていた。毛布はめくれていて、愛乃は寝言で「ううん……」とつぶやいて、ますますぎゅっと透にしがみつく。
ちょうど、透の身体に、愛乃の顔が埋まるような形になっている。薄着のパジャマは乱れていて、胸元が寝る前よりも開いていて、谷間が見えている。
透は体温が上がるのを感じた。寝起きで忘れていたけど、昨夜は愛乃たちと一緒に寝たんだった。
(そういえば知香はどこだろう……?)
一瞬、知香のことが脳裏によぎるが、すぐに愛乃が「透くん……」と名前を呼びながら、透の身体に頬ずりする。
(こ、これはまずい……)
愛乃はまだ眠っているようだけれど、早急に起きてもらわないと困る。
「あ、愛乃さん……!」
「う、ううん……?」
愛乃はようやく目を覚ましたようで、そして、青い目をぱっちりと開け、次に驚いた表情をした。
目の前に透がいたのだから、当然だろう。
しかも……。
「と、透くんの……エッチ」
「せ、生理現象だからね?」
「わ、わたしでエッチな気分になったなら、正直に言ってほしいな」
「違うから!」
「隠さなくてもいいんだよ? わたしのせいで透くんが苦しそうなら、わたしが透くんの欲求不満を解消してあげないとね?」
「愛乃さん……俺の話を聞いてください」
くすくすっと愛乃が笑う。愛乃も本気ではないのだろう。
だが、本気にした人がいた。
「へえー、透ってば、リュティさんに欲情してたんだ?」
部屋の扉に知香が仁王立ちして、透たちをジト目でみていた。
もう知香は清楚なワンピース姿に着替えていて、しかも、その上にはエプロンをつけていた。
「ち、違うよ……。というかなんでエプロン姿?」
「そ、それは……透に朝ご飯を作ってあげようと思って」
「え?」
「そうしたら、なんだか私が透の奥さんみたいかなって」
知香がほんのりと頬を赤く染める。愛乃がむうっと頬を膨らませる。
「近衛さん、透くんに好きになってもらうように必死だね?」
「わ、悪い? あなたも同じでしょう?」
「……そうだね。でも、ご飯を作るよりも、朝チュンの方がずっと新婚さんらしいと思うよ?」
「透とあなたは何もしていないでしょう!?」
「でも、透くんはわたしでエッチな気分に――」
二度目の言葉に、恥ずかしいからやめてほしい、と透は愛乃に願った。エッチな気分になったのは嘘ではないけれど……。
「ともかく、せっかく近衛さんが用意してくれたんだから、朝ごはん食べない?」
透の言葉に、愛乃と知香は顔を見合わせ、そして、こくりとうなずいた。
美人の姉がキスの練習台になってヤンデレ化する短編ラブコメも書いてるのでよろしくです!
タイトル:幼馴染に俺が振られたら、美人で優しい義理の姉のブラコンが過激化してヤンデレになった
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