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北欧美少女のクラスメイトが、婚約者になったらデレデレの甘々になってしまった件について【3巻が6/25発売!】  作者: 軽井広@北欧美少女2&キミの理想のメイドになる!
第一章 婚約者という存在

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4話 クラスメイトの少女は、透の幼馴染に絶対に勝ちたい

 愛乃と本屋で遭遇した翌日。

 午前の一時間目の英語の授業が終わり、短い十分間の放課(愛知県では休み時間のことをこう呼ぶ)となった。


 透は小さくあくびをした。


(……眠い)


 昨日の夜は録画していたアニメを見て、積読していた海外の推理小説を読んで……としていたら、つい夜ふかしをしてしまった。


 寝たのは午前三時だから、完全に寝不足だ。


 次の時間は世界史。


 この学校は、進学校であると同時に、自由放任の校風が特徴だ。


 つまり、厳しい教師以外の授業なら、授業中に居眠りをしていても、何も言われないことが多い。


 世界史も居眠りしていてもおそらく何も言われない。けれど、透が唯一楽しみにしている授業でもあった。

 もともと透は歴史が好きだったが、世界史の教師は雑談が圧倒的に面白かった。


 ということで、眠るという選択肢はない。


 けれど、休み時間のあいだは眠気がひどい。いつもなら、本でも読んで過ごすところなのだけれど、このままでは寝てしまいそうだ。


 そのとき、背後からバシバシと背中を叩かれた。

 

「……痛い」


 透が感想をつぶやくと、相手は透の目の前に回り込んだ。そして、「眠そうにしてたから」とからかうように言う。


 その女子生徒は、猫のような瞳を細め、微笑んだ。


「おはよう、連城!」


「桜井さんは元気だね」


 透は肩をすくめた。

 目の前の少女は「そう?」と首をかしげ、セミロングの綺麗な茶髪がふわりと揺れる。


 彼女の名前は桜井明日夏。透とはクラスメイトで、中等部以来の知り合い。それ以上でもそれ以下でもない。


 明日夏はすらりとした美人で、明るい性格の人気者だった。

 制服をおしゃれに着崩している。

 少しギャルっぽい見た目に反して、成績は極めて優秀でいつも学年一桁前半だ。


 おおよそ、非の打ち所のないタイプの人間だ。普通なら、透はこのタイプの人間にあまり近づかないようにしている。


 そんな明日夏とときどき話すような仲になったきっかけは、透の幼馴染だった。


 透は微笑んだ。

 

「ところで、今度の定期試験では近衛さんに勝てそう?」


「もちろん!」


 ぶんぶんと手を振り回して、明日夏はガッツポーズを作った。

 近衛さん、というのは、透の幼馴染の近衛知香のことだ。もう透は、知香のことを名前では呼ばない。


 それはそれとして、明日夏は知香のことを目の敵にしている。

 というのも、明日夏はとても優秀な少女なのだけれど、いつも知香の下に甘んじていた。


 中等部時代、成績は知香が学年一位、明日夏が学年二位ということが多かった。生徒会長選挙も、一騎打ちの上で、明日夏が敗れた。

 他にも学年のテニス大会でも、決勝で負けていた。


 すごく優秀だけれど、一歩だけ知香に及ばない。

 それが桜井明日夏という子だった。

 

 なので、明日夏は知香を勝手にライバル認定して、必ず勝つと固く決意しているようだった。

 そこで、透の出番である。明日夏は、透が知香の幼馴染だと知り、知香に勝つために近づいてきた。


 それが中等部三年のときだった。

 ところが、残念なことにそのときには、透と知香はもう疎遠になっていた。

 

(だから、桜井さんからしてみれば、俺は役立たずだったと思うんだけどね)


 ところが、それ以来、縁が続いているから不思議なものだと思う。


 とはいえ、時々話すクラスメイト以上でも以下でもないのだけれど、たまに他の男子生徒から羨ましがられることがある。


 明日夏も知香と並ぶほどの美少女だ。しかも知香と違って親しみやすいフレンドリーな性格をしているから、かなりモテると思う。


 本人はあまり色恋沙汰に興味がないようで、透の知っている範囲の明日夏は、「打倒近衛知香!」に燃える愉快な少女でしかない。


 そして、そういう明日夏のことを、透は嫌いではなかった。

 透は、知香の隣に立つのにふさわしい人間になろうとかつて思っていた。そして、とっくの昔に挫折した。


 でも、明日夏は諦めずにチャレンジを続けている。たとえどれほど負け続けても。

 そういうところが、透にとってはまぶしかったし、羨ましかった。


 明日夏がひそひそ話をするように、透の耳に顔を近づける。

 女の子特有の甘い香りがして、透は一瞬ドキリとする。


(また他の男子生徒から嫉妬されるな……)


 透は心の中で苦笑した。

 そんな透の心中になんて、明日夏は気づいていないだろう。


「ねえ、あの知香の弱点、なにかないの? 一発で倒せちゃうような致命的な弱点とかさ」


「たとえば?」


「蛇がすごく苦手で、見せただけで失神するとか?」


「そういう話は聞いたことがないなあ」


 あの知香に限って、そういうわかりやすい弱点はない。

 透は、幼い頃から知香のことをずっと知っているし、そして知香が完璧超人だとわかっていた。

 ……その知香をしても、どうしようもないことがあったけれど、でも、それは弱点とは違う。


 それに、仮に知香に弱点があったとしても、無意味だと思う。


「桜井さんは、近衛さんの弱点をついて勝つようなやり方では、満足できないんじゃない?」


 そういう卑怯なやり方で勝つことを、明日夏は良しとはしないだろう。自分の力で知香に勝ってこそ、意味がある。


 そう考えているはずだ。

 浅い付き合いとは言え、そのぐらいは、透も明日夏のことを理解していた。


 明日夏は透の言葉にきょとんとした顔をした。それから少し頬を赤くして、嬉しそうに微笑む。


「そうね。よく分かっているじゃない。あたし、連城のそういうところ好きだよ」


「からかわないでほしいなあ」


「からかっているわけじゃないんだけれどね」


 明日夏はくすくすっと笑って、そう言った。



<あとがき>


次話は教室での愛乃と透の話の予定です……!


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