31話 ベッドの上でのイチャイチャ
透は、愛乃の金色の髪をそっと撫でてみた。愛乃は微笑む。
「体に触るって言って、髪を触るの?」
「だ、ダメだったかな?」
「ううん。嬉しいけど……でも、お尻でも胸でも好きなところを触ってくれてもいいのに?」
愛乃が頬を赤く染めて、小声で言う。
思わず、透は手を止めて、愛乃の胸を見てしまう。薄手のネグリジェは、愛乃の胸の形をはっきりと見せつけていた。
愛乃が青いサファイアのような瞳で、いたずらっぽく透を見つめた。
「連城くんの目が、わたしのおっぱいに釘付けだね」
「そう言われると恥ずかしいな……」
「でも、事実でしょう? ……やっぱり、わたしの胸って大きい?」
「そ、そうだと思うけど……でも、比較する相手がいないから」
そう言うと、愛乃は嬉しそうにぱっと顔を輝かせた。
「そうだよね! 連城くんは、近衛さんや桜井さんの胸を触ったりしたことはないんだものね?」
「リュティさんの胸だって触っていないよ!」
「でも、これから触ってくれるんでしょう? わたしだけが特別で、連城くんにエッチなことをしてもらえるんだよね?」
「あ、リュティさんは婚約者だから」
ふふっと、愛乃は誘惑するような、魅惑的な笑みを浮かべた。
透は思わず愛乃のネグリジェの胸元に手を伸ばす。愛乃がびくっと震え、目を閉じた。
「いいよ。連城くんにだったら、どこを触られたって、恥ずかしいことはないもん。だから、わたしをもっと連城くんの特別な存在にしてほしいな」
そして、愛乃は透に甘えるように続きをねだった。
愛乃は、これ以上のことをしても……最後までしても、受け入れてしまうと思う。
透も覚悟を決めるべきなのかもしれない。透が愛乃に手を伸ばし、その体の柔らかい部分に触れても、愛乃は許してくれるだろう。
いや、喜びさえしてくれるのかもしれない。
けれど。
透は手を引っ込め、そして、愛乃の金色の髪をそっと撫でた。
愛乃は不思議そうに透を見つめる。
「連城くん?」
「えっと……ごめん。俺がいっぱいいっぱいで……これ以上は……」
もちろん、健全な男子高校生として、目の前の美少女を好きにしてしまいたいという欲望はある。
けれど、同時に、これ以上先に進む勇気も、透にはなかった。女の子とこういうことをするのは、透は初めてで、慣れていないのだ
透にとって、愛乃は壊れやすい宝石のようなもので、自分の手でそれを壊してしまうのが怖かった。
臆病な透に、愛乃は失望するかもしれない。
だが、愛乃は優しく微笑み、胸をはだけたまま、透の背に手を回し、ぎゅっと透を抱きしめる。
二人はベッドの上で密着する格好になる。ぎゅっと抱きしめられて、愛乃の体の柔らかさを感じ、頬が熱くなるのを感じた。
「リュティさん……!?」
「……焦らなくてもいいよね、今日はこれで許してあげる。代わりにね、お願いがあるの」
「な、なに?」
「下の名前で呼んでほしいな。わたしたち、婚約者だもの。いつまでも他人行儀なのは嫌だよ?」
「えーと、でも……」
「聞いてくれないと、放してあげない」
このまま、ずっと密着されたら、透はどうにかなってしまいそうだ。
透は降参した。
「わかったよ、愛乃さん」
「呼び捨てでもいいのに。でも、ありがとう……透くん」
透は下の名前で呼ばれて、どきりとする。まるで恋人のように、愛乃はその名前を甘く発音した。
そして、愛乃はいきなり、ちゅっと透の頬にキスをした。その柔らかい感触はとても心地よかった。
透がびっくりしていると、愛乃はいたずらっぽく、恥ずかしそうに微笑む。
「次はね、透くんが、わたしの唇にキスしてくれるように……頑張るから」
愛乃はそう言って、幸せそうに透に身を委ねていた。
いずれ、透は愛乃なしではいられなくなるかもしれない。そのぐらい、愛乃が大事な存在になってしまうのが怖かった。
失うことの恐怖と絶望を、透はよく知っていた。
でも、今は……そんな心配より重要なことがある。
目の前の愛乃のことが、透には愛おしかった。
「俺も、愛乃さんのことを守れるように、頑張るよ」
そして、透は愛乃を抱きしめ返し、その金色の美しい髪をそっと撫でる。
愛乃はとてもうれしそうな表情を浮かべ、透にますますぎゅっと抱きついていた。
「やっぱり、透くんのことを感じていたいな。このまま一緒に寝たらダメかな?」
「だ、抱きしめあったまま?」
「うん。ど、どうかな?」
愛乃は恥ずかしそうに透に尋ねた。下の名前で呼ぶのは交換条件だったはずだけれど、透は結局ダメとは言えず、うなずいてしまう。
「良かった」
愛乃がささやくようにつぶやく。透は恥ずかしくなって、部屋の明かりを消した。
「おやすみなさい、透くん」
「えっと……おやすみ、愛乃さん」
そうは言ったものの、腕の中に愛乃の華奢な体を抱きしめた状態で、透は冷静ではいられなかった。
ただでさえ、愛乃の胸を触った直後なのだから、興奮して寝付けない。
けれど、愛乃はすぐにすやすやと寝息を立て始めた。
眠ってしまったみたいだ。
不眠症で薬も飲んでいると言っていたのに、あっさりと愛乃が眠ってしまい、透は拍子抜けする。
透がいれば安心して眠れるかもしれない、という愛乃の言葉は、本当だったわけだ。
そのぐらい、愛乃は透のことを信頼してくれているらしい。
それは愛乃の裸を見たり、胸を触ったりすることよりも、透にとっては嬉しいことだった。
愛乃は透のことを必要としてくれている。
それがいつ終わるかはわからないけれど、でも、今は透は愛乃の婚約者だった。
そうであるかぎり、透も愛乃の信頼に応え、愛乃の力になりたい。
「んっ……透くん……」
愛乃が寝言を小さくつぶやく。
透は愛乃の体にそっと手を伸ばす
そして、そのきれいな金色の髪を優しく撫でた。