28話 ベッドイン?
透は、愛乃と無事に何もないままお風呂から上がった。
(いや、一緒に風呂に入った時点で何もなかったとは言えなけれど……)
後少しで理性を失って、愛乃のバスタオルを奪って、襲ってしまうところだった。
何もしなかったとはいえ、やましい目で愛乃を見てしまった。
「わたし、男の子と一緒にお風呂に入っちゃったから、もうお嫁には行けないね?」
愛乃がいたずらっぽくささやき、透はどきりとする。
愛乃は薄手のピンクのネグリジェを着ていた。
寝室のベッドの上に腰掛け、白い足をぶらぶらさせている。
透は立ったまま、愛乃の艶やかな湯上がり姿を見て、どきりとする。
「でも、わたしは連城くんのお嫁に行けるものね?」
愛乃は小声で言う。
透はますますうろたえ、頬が熱くなるのを感じた。そういう愛乃も顔が赤い。
「婚約者だから、そ、それはそうだけど……そもそも、お嫁にいけないようなことは、していないよ……」
「エッチな目でわたしのことを見ていたくせに。……興奮した連城くんは、ちょっと可愛かったかも」
愛乃はふふっと笑う。
そして、愛乃はぽんぽんとベッドの上の自分の隣を叩いた。
「連城くんも座ってもいいんだよ?」
「ああ、えーと……」
「もしかして、わたしのことを意識して、恥ずかしがってる?」
「意識させるようなことを、リュティさんがするからだよ……」
「そっか。わたしが連城くんを恥ずかしがらせてるんだ……ちょっとうれしいかも」
愛乃はふふっと嬉しそうな顔をした。
そんな可愛い笑顔をするのは、反則だ。
その笑顔を見ていると、愛乃の願いはすべて叶えたくなってしまう。
透はそっと愛乃の隣に腰掛けた。
どのみち、愛乃と一緒のベッドで寝るのだから、隣に腰掛けるぐらいで恥ずかしがってるわけにはいかない。
とはいえ、ふたりとも寝間着姿で、ベッドに並んで座っていると、完全に恋人同士のような雰囲気になる。
透が隣の愛乃をちらりと見ると、ネグリジェ姿の愛乃はきれいな肩が露出していて、か胸の上の方と谷間も見えている。
透の視線に気づいたのか、愛乃が顔を赤らめる。
「連城くん……やっぱりエッチな目でわたしのことを見ているよね」
「ご、ごめん」
「いいの。だって、そのために、わたしはこのネグリジェを選んだんだもの」
愛乃の言葉に、透は驚いて愛乃の青い瞳をまじまじと見つめた。
恥ずかしそうに、愛乃が視線を外す。
つまり、愛乃は透を……誘惑しようと思って、そういう寝間着を選んだということだろうか。
「に、似合ってるかな?」
「す、すごく可愛いと思うけど……」
金髪碧眼のスタイル抜群の美少女が、薄手のネグリジェのみを羽織っているというのは、透にはあまりに刺激が強すぎた。
もっと、普通のパジャマでも、愛乃は可愛いと思うけれど。
愛乃が嬉しそうに微笑む。
「良かった……連城くんに可愛いって言ってもらえるのが、一番嬉しいもの」
そして、愛乃がそっと透の手に、小さな手を重ねる。その手の温かさに、透はうろたえた。
「りゅ、リュティさん……」
「連城くん……すごくどきどきしてる」
「リュティさんのせいだよ……」
「わたしがエッチだから?」
「リュティさんが可愛いから」
透がそういうと、愛乃もどきりとした様子で目を泳がせた。
「わ、わたしのせいで、連城くんがどきどきしているなら……嬉しいな」
そして、愛乃は恋人のように透の手の指に、自分の指を絡めた。
そして、甘い声でささやく。
「婚約者がベッドの上ですることと言ったら、一つしかないよね?」
「眠ること、だよね?」
透がわざとそう言うと、愛乃は頬を膨らませて、透を睨む。
そんな表情をしても可愛いなあ、と透は思ってしまう。
「連城くんの意地悪。もう一つあるよね?」
愛乃が甘えるように、透の肩にちょことんと頭を乗せ、しなだれかかる。
その金色の髪がふわりと揺れた。
「リュティさん……あまりそういうことをされると……嬉しいけど……本当に襲ってしまいそうになるから……」
「連城くんがそうしたいなら、襲ってくれてもいいんだよ? ……お風呂の続き、ここでする?」
愛乃は透に体重を預けたまま、小さな声で透に問いかけた。





