狂信者と魔法実技5
そして試合が始まっていく。
魔道士を目指すのだから魔道書か、杖を武装の選択肢として選ぶのは当たり前、器用な奴はそれに加えて魔法行使の詠唱中に短剣や、長剣を扱う者もいた。その殆どは自前の費用で賄ったか、家の物を使っている奴も居た。
純粋に杖や魔道書だけを使う奴は、それぞれ杖術や拳闘術で対応していた。
やっぱりこういった試合は学生同士のものであっても観戦するのは楽しい。
時々ヤジが飛び交い、罵り合いが行われる。
流石に行き過ぎた罵詈雑言は諌められはするものの、止められる事はなかった。教師陣としても、今回の一件でストレスがかなり溜まっているということを理解しているようだ。
「次!ルーク・グランツとネルラント・カンベル!」
俺の出番だ。フォンが抜かれている。冷遇か、配慮か。
子爵以下の下級貴族の子はフォンがつかないが、伯爵以上はフォンがつく。まあ、皇女殿下は別だ。識別の為のフォンであって、皇家にその必要性はない。
赤毛に蒼い目、グランツ子爵の孫か......グランツ子爵の年齢では───まあどうでもいい、流行病や事故で跡継ぎが死んでしまうこともままあることだ。
「初めまして、k「お爺様に恥を掻かせた売国奴め!」
初っぱなから相手の言葉を遮って、売国奴呼ばわりとは......彼の立場を考えみれば仕方ない事だが......俺は罵倒されて嬉しく感じるような変態紳士ではないので勘弁願いたい所だ。
まあ周りを見ても俺に対するブーイングや、ヤジばっかだ、クラスの総意としてはここで俺がボコボコにされるのを欲しているのだろう。
人は誰かを貶めることで、優越感を得て、共闘する。
嘆かわしいが、しゃーない。世界の摂理だ。




