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国粋主義の狂信者  作者: AAKK
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狂信者と放課後4

 「是非仲良くなれることを願っています」

 「ありがとうございます。貴方の方は大丈夫ですか、色々と大変な様ですが?」

 「ええ、まあ大丈夫です。私は最悪の場合″実力行使″ができますので」

 まあ一時の情に駆られて実力行使するなんて事、任務が遂行できなくなるから是が非でも避けるが。

 「実力行使というのはあまり感心しませんね......もし、困った事があれば私に相談してくださいね。貴方にも大きな借りがありますから」

 大抵の面倒事は一人でなんとかできるから頼る事もなさげではある。というより、頼ることがないのが最善だ。

 何事も平和が一番というやつである。

 「着きましたね。では最初はどこへ行きましょう?」

 「普段使いできる物はどうでしょうか。例えば料理道具や掃除用具、これらは値が張る物ほどが長持ちする傾向にあります。まあそこらが妥当ですね」

 「ではナイフを見に行きましょう!ナイフなら様々な事に使えます。料理だけでなく、護身用にも......」

 「分かりました。行きましょう」

 俺たちは刃物店へ向かう。

◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻

  「あのーすみません。ナイフが欲しいんですけど......」と店のドワーフに話しかける。

 「......予算は?材質は?用途は?」

 アホやからした。色々聞いていない俺が聞くんじゃなくて、皇女殿下に聞いてもらえばよかった。マシでなにやってんだ。

 「予算は......えっt「大銀貨10枚、材質は......そうですね、ミスリル合金製、ナイフの用途は料理、戦闘に使える物をお願いします」

 ナイス皇女殿下!

 「要は、錆ねぇ、長持ちするように造れって事か。分かったよ。嬢ちゃん、なかなか良いセンスしてんな」

 「本職の方からお褒めに預かり光栄です」

 「じゃあ3週間もありゃ造れるからよ。3週間後に来てくれ。代金はその時でいい」

 「先払いでなくて良いのですか?」

 普通、依頼する時は前金が必要だったり、先払いしないといけない事は多い。なぜなら、作った後にやっぱやーめた、なんて言われると売り手としてはオーダーメイドの物を売ると言っても難しい場合がある。

 そういった事を防ぐ為にもオーダーメイドは先払いが多い。

 「見りゃわかる。アンタ、高貴な身分のお方なんだろ?それなら払わねぇなんて事はありゃしねぇよ」

 まあ、信用されること皇女殿下だから当たり前とも言えるが。このドワーフも気づいているのだろう。

 「ありがとうございます。では3週間後にお願いします」

 「ああ、バッチリ仕上げてやる」とドワーフはサムズアップをする。

 それに皇女殿下は手を振ってその場を後にする。

 「案外早く終わってしまいましたね。しかも割り込むように言ってしまって......加えてそのまま二人で話し込むようになってしまって」

 「いえいえ、大丈夫です。あそこは私がでしゃばる場ではありませんでした。ナイフの予算や素材も聞いていなかったので......」

 「そうでしたね。ついつい雑談に花を咲かせてしまって、その事を話すのをすっかり忘れていました。すみません」

 「皇女殿下が謝るような事ではありません。聞くのを忘れていた私の責任です」

 これに関してはマジで俺の責任だ。これでは俺がただただ付いてきた取り巻きと何ら変わらない。俺の面子が立たない。

 いやまあ元々行く気がなかったのもあるが。それにしても無策に自分から話しかけておいて、挙げ句しどろもどろになると言うのだから。

 なんというか情けない。

 「それでは少し商会の中を回った後に市場へに行きましょうか。色んな食べ物も売っていますし」

 「分かりました。では行きましょう」

 そして俺たちは商会の中を見て回る。

 どこかで見たことあるような野菜や果物。

 はたまた、まったく見たこともない奇妙な野菜や果物など、様々な物があって俺には新鮮に見えた。

 こちらに来てからそんな野菜や果物についてそんなに気にも留めていなかった。

 食うものといえば肉とパンそれにその他日本でオーソドックスだった野菜を少し買って料理をするか、試験的なレーションの二択ぐらいで、知らない野菜は食わないし、ましてや値段もアホみたいに高く、その上に味覚もないのに、果物なんてのはもっての他だった。

 要はコスパが悪かった、新しく野菜や果物を買ったとして、その洗い方は?調理の方法は?というのが面倒だ。

 普通なら多少なりとも美味しい物を食べるために料理を作るのだろうが、味が分からないのにわざわざ料理を作る意味もない。

 現状の料理だけで十分健康体を保てている......多分。

 そんなこんなで幾つかの出店や、屋台を周りつつ、色んな物を食べ歩きする。味がしないのは相変わらずだが。

 適当に相づちを打って会話が終わらないように話を広げて、気まずくならないように不自然な間を空けず、なるべく元気に見えるよう振る舞う。

 やはり皇女殿下というのも大変な様で、記念式典への参加や、同派閥が集まった時のまとめ役、お見合い等、在学中はあまり仕事はないようだが、それでも多忙な日々を送っているらしい。

 齢13の少女にまとめられる派閥というのもだいぶ情けないような気がするが、前皇帝派の中で権威のある、一番の尊敬を集められる者が皇女殿下しかいない訳で、仕方ないと言えば仕方ない。

 それは女帝派も同じなのだが、そちらは比較的に皇家の血筋に近い大御所貴族が多数存在する。

 かといって唯一の男系男子を殺してしまったのはどうかと思うが。

 あの判断はやり過ぎではないかと思う。

 結果として自決ではなく、戦死という結果になったのだが、それでも男系男子を失うというのは現状において、あまり良いこととも言えない。

 俺も、個人的な感情を抜きにして考えると、蟄居でよかったのではないかと未だに思う。

 閑話休題

 そしてしばらく街を散策し、皇女殿下を寮まで送る。

 「どうでしたか?今日は」

 「楽しかったです。ありがとうございました」と頭を下げる。

 「そうですか。それは良かったです!」

 「では」

 「はい、ではさようなら」

 そして皇女殿下と別れて寮に帰る。

 肩の荷が降りたような気分だ。

 まあ、これこそ本来の任務に近いのだろうが、己の職務怠慢と見込みの甘さ、そして現在の己の立場がそれを阻害している。

 本人に親しくなろうと周りがそうでなければ任務遂行は難しい。

 ともかく、かなり皇女殿下に心労を掛けていたようだ、本当に情けない。

 護衛対象に労われるなど言語道断、軍人として失格である。

 制服を井戸から汲んだ水と灰汁から作った石鹸で昨日と今日の汚れを洗い流す。水の音が部屋中に響く。


 そして、洗い終われば手を拭いて、丁寧に魔法で水分だけを取り除き、寝間着に着替えて寝る。


 今日は買い食いしていたので夕餉はナシだ。

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