狂信者と5限目
「ふぅ、ギリギリだったな」
黒板の上の時計を見てもあと五分はあるが、既に教師は壇上に立って居た。
「貴方、名前は?」
「ネルラント・フォン・カンベルです」
「Mr.ネルラント。貴方も紳士ならば10分前には授業の準備を終わらせておきなさい!」
喝が飛ぶ。礼節科の教師は女性で、目付きのキツい人だった。
当然それで俺は説教をくらった訳だが。
まあ、大方言うことは10分前行動の大切さという事に集約された。
そこまで早めに行動しなくてもいい気がするが、そこを言うのはナンセンスだ。
残りの昼休みはガミガミと言われるだけで消えていった。
礼節科は礼節と言うだけあって、貴族の礼儀的なモノを教えたり、そもそもそういった経験を一切してこなかった庶民に対して、皇家貴族と面と向かった時に恥をかかないようにとういう目的で創設された科だ。
とは言うものの、貴族の子は幼い時からそういった躾がなされているし、庶民だってよほどな事で功を上げて叙勲されない限りは殆ど皇家、貴族と出会う事はない。
だからこの授業の恩恵を受けるのは必然的に限られる。
主に魔法第四科-特別魔法選抜科までのクラスの中で魔道師団に入るもしくは軍大学に入り、士官候補生として入隊する庶民の生徒である。
そういった者の中には魔法や、魔法の勉強ばかりをしていて上下関係であったり、序列の概念が分からない者もいる。
それが分からずに失脚するのはあまりにも惜しいということでそういった者、言うなれば儒学に近い考えを知らない者に教える、哲学的な学問だ。




