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狂信者と昼休み6
「そういやお前には許嫁とかいないのか?」
「残念ながらいないよ。君とは違って引く手あまたと言う訳でもないしね」と肩をすくめる。
「そうなのか......意外だな。やっぱり家柄か?」
「そうだね。やっぱり家柄は重要な事だよ。幾ら話が上手かろうとモテようと最終的にはそこに集約する。ぽっと出の貴族は厳しいよ」
「モテるのかよ......」
やっぱりモテるらしい。
「羨ましいかい?」と自慢げになるバルトール。
「いや、羨ましくないね。恋愛やら情事やら、許嫁やら面倒だ。外から見る方がマシだ」
好きだ嫌いだというのは外から見聞きするのは面白いが、その当人となるのは面倒だ。
ましてや人の情などは測れないし、許嫁などいつ背後から一突きされるか分からん。
背後の傷は武士の恥というが、それ以上に背後が信用できないのは困りものだ。
そもそも任務が終われば死んだことにでもされるだろうことを願う。扱き使われようと構わない、だから全ての権利、義務からは逃げる。やったことの責任は出来る範囲で取る。身辺はいつ死んでもいいように綺麗さっぱりしておきたい。




