狂信者と昼休み5
「レドル様と皇女殿下の″話し合い″だそうだ。さっきまでそれで少し動いていた」
「ふ~ん、で?何かしてほしい事はある?」
「月末に紅茶部の部屋を強制的に開けて、そこで行う。だからお前にはそれを噂として広めてほしい」
「ほう?それで注目を集めてどうするんだい?」
「注目を集める事は副次的なモノだ。本題は話し合いの内容を聞かせない事にある」
「つまりは、女帝派と前皇帝派の中でもトップクラスの人物が、″話し合う″だけに注目をいかせて内容には一切触れさせないようにしたいと?幾ら僕でもそりゃ無理だね」
「そうか......ならばできるだけ盗み聞きされないようには出来るか?」
「うん......まあそれなら出来るかな」
「なら頼む。ありがとう」
あんな事をしておきながら友達として振る舞って頼み事をするのは全く反吐が出る。
「それにしても列長いね。もう少し話そうか」
「話すにしても特にアレ以外に変わった事はないぞ」
話せない事は沢山あるが。
「そうだ。それなら僕の話をしよう」
「じゃあ、ならそれを聞かせてもらおう」
「どこから話そうかな──────」
話した内容は特に何か重要な事ではなかったが、面白い話が多かった。流石は商人の息子というべきか、話が巧い。
大袈裟な身ぶり手振りと興味を惹き付ける内容と言葉のセンス。
そして、緩急をつけた話し方。
端から見ると詐欺師のような話し方だが、良く練られている。
どうりでフロスト商会が帝国のポピュラーな商会になる訳だ。




