狂信者の受験3
マズい、と思いすぐさま距離をとって魔導書に切り替えようとしたが、首筋には聖剣。
つい先程まで杖を構えていたナガサワの手には聖剣が握られていた。聖剣とはまあ名前通りの剣で聖なる力を持つ剣のこと。
一太刀でも食らえば死にかねない。
「すげえな。だがここまでだ、これ以上は俺も本気を出すことになっちまうからな、カンベル?それとも俺の聖剣を食らうか?」
「......降参。負けたよ、ナガサワ。凄いな。首筋にある剣を下ろしてくれ」
試合は終わる。結果としては惨敗もいいところだが、別に勝敗で合否が決まるわけでもないので、そこまで気を落とすことでもない。
ちなみに結界はしばらく使用不能になったらしい。なんでも、互いに影響し合っているせいで一斉メンテナンスを行う羽目になったとか。
そして、宿へと戻る。
「お疲れ様でした」
「ハルカト」
「はい」
「カンベル伯は何か伝言を頼まれたんですか?」
「我が儘を聞いてあげるようにとのことです。子供は子供らしくある時間が大切だと」
「では、手合わせ願いたい」
「そんな事でよろしいのですか?」
「ハルカトの戦場での立ち回りは見事でした。その腕を見込んでの事です」
「見られておりましたか。分かりました」
そうして修練場へと向かう。外にはもう西日が照っていた。
互いに剣を構える。
「どこからでもどうぞ」
「いきます!」
そうして斬撃の音が響き渡る。そして......
「ッ!」
剣が飛ばされる。
「もうよろしいでしょう」
「何がダメだった」
「両刃剣はやめておいた方がよいでしょう」
「なぜ?」
「ご存じの通り長剣は叩き斬るというのが主な使い方です。それに対してネルラント様の剣筋は斬ることを重視したものですね、そういう方にはあまり向きません。」
「それで?」
「以前に使われていたものを使用してはどうでしょう」
「見られていたんですか」
「他人を覗くとき、他人もまたこちらを覗いているということです」
「ハハッ、そうでしたか。しかし、アレは魔導書の発動を鍵とする魔刀で、軽々しく使えるものでは無いんです」
「そうでしたか、こちらでそれをお造り致しましょうか」
「遠慮させていただきます。只でさえ例の件でご迷惑をかけているのです。そこに作り方の複雑な刀の注文というのも......何より新装備もありますので」
「そうですか......身勝手な提案をしていまい申し訳ございません」
「いえいえ、こうして助言を頂けただけで十分ですよ」
「ではもう月も出ていますので戻りましょう」
「そうですね」