狂信者と三限目2
要は虎の子の魔道師団を成功するかも分からない戦術で喪いたくないのだ。
何よりも軍の指揮を取る者は浸透戦術を嫌う。補給のこない戦場は地獄に等しい。
時には人の肉すら″食用の肉″として食らう。倫理観などありゃしない。それに馬車が輸送の今の時代では碌な補給が来ずに全滅なんて事があるかもしれない。
浸透戦術は一日で125マイル(200km)以上の進軍を可能とするが、その為の補給は?と言われると閉口するしかない。補給線の限界である。
同じく塹壕戦も嫌われている。衛生観念が徹底されている軍の上層部では疫病の持ち込みが懸念されているからである。
衛生観念が転生、転移者によってもたらされ、徹底された。
それは軍においても同じで、軍隊というものは病気を持ち込みやすい。なにぶん不衛生な空間で飲み食いや、排泄する事が多いのだ。そして、それについての危険性等も士官に徹底されている。
それに軍隊が街に帰ってきた時に病気が広がる怖さというものも身をもって経験している。
カンベル伯爵夫人が死んでしまった病気が、これにあたる。幸いなことに迅速な対応で被害は少なく抑えられたが、これは国内に改めて衛生の大切さを認識させることになった。
それゆえに泥濘になりやすい、病気の元ともいえる塹壕という場は嫌われている。
それに流行り病に対応する臨時の人員として真っ先に駆り出されるのは魔道師団である。当の魔道師団が病気になればそれこそ本末転倒と言える。




