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国粋主義の狂信者  作者: AAKK
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狂信者の受験2

 「それでは試験を始めてください」

  厳しい寒さが残る十一月上旬、静粛な空間が羽根ペンの音で埋め尽くされる。

 ギリギリまで暗記カードを使って地歴を覚えたが取れても半分というところだろう。正直な話、ヤバい。久しぶりの試験はその空気に呑まれてしまう。

 そして実技試験。行われるのはクレー射撃の魔法版で、十回射出された粘土板を《アロー》でどれだけ撃ち落とせてるかというもの。

 周りから歓声があがる。

「凄いぞ。十発全部当てやがった」

「なんなんだあいつ!」

  様子を見てみると黒髪黒目のやつがそこにいた。

 心底嫌な予感がするし、妙に馴染み深いが気のせいだと願いたい............が、いかんせん魔力反応が高すぎる。

 気のせいでは無さそうだ。

 その後俺も二つ外して八つの粘土板を当てたが例の奴の後のお陰でそこまで目立たなかったし、なんなら九発当てた奴もいた。

   流石に″搭載″している弾道演算処理を使うのも不正だと思うのでしっかりアナログな計算方法で出た値を代入した。

 最後の二発は集中力が切れてしまっていた。余裕こいてやるもんではなかったし、知恵熱のような熱さを感じた。


  さて次の試験は戦闘試験といって戦闘の技能を見る試験でその勝敗は関係ない。負けたからといって合格しない訳でも、逆に勝ったからといって、不合格にならない訳でもない。

 フィールドは50メートル四方で万が一他に影響が出ないよう、大規模結界が張られていて、一斉に試験ができるようにその空間を拡張している。

 そして対戦相手はランダムである。そして嫌な予感がするときは大抵その最悪パターンのルートに入っているもので。

「やあ、よろしく。俺はハルト・ナガサワ、互いに良い戦いにしよう」


............さっきの黒目黒髪だった。


「そうだな、俺はネルラント・フォン・カンベル。貴族だからといって遠慮せずやってくれ」

 俺が選ぶのは練習用長剣と訓練用魔導書、対してナガサワが選んだのは自前の剣と杖。

 ″ナニカ″名状し難き感覚が脳を駆け巡っている。

 恐らく思考を読み取っているのだろう。

 だが、幸いにも通信網に侵入されてはいない。

 ナノマシンまでを読まれるとまずい。

 剣と杖、二つとも人智を超えたような雰囲気を纏っている。

 人外の力を持っているのは間違いないし、ナガサワの魔力は桁違い。まあ十中八九転生者とそれによる祝福か。まあ頭悪く言えばチート能力。

 単体の総合力では普通より少し上並みの俺ではハッキリいって厳しい。

「試合開始!」

挨拶代わりに贈られるのは中級魔法の《ファイアランス》による無詠唱誘導飽和攻撃、それは迎撃が厄介なだけでなく、周りの魔力を攪乱させて魔力探知能力を低下させる。視認出来るだけで千を優に超える《ファイアーランス》が展開されていた。

 《シールド》による防御は悪手、スレスレで壁や地面にぶつけて回避するがその着地点に戦術級魔法の《イフリートフレイム》と《アクアバースト》が同時に放たれる。その瞬間起きたのは水蒸気爆発。巨大な爆発とまばゆいばかりの閃光、これは防げない。周りに張ってあった筈の結界にも(ひび)が入っている。

 上級魔法を幾つも撃って壊れないあたりは流石帝国が直接管理しているだけはある。

 ともかく俺は初級、中級、上級、戦術級、戦略級の中で初級と中級、無理しても上級魔法しか撃てない。それを《ファイアーランス》の無詠唱誘導飽和攻撃という戦術級下手をすれば戦略級の魔法を軽々と放った後、二つの戦術級魔法をノータイムで放った。

 そもそも戦術、戦略における演算処理能力を優先して設計されたためも魔力量も普通以下、単純に相性が悪い。《突撃型》の近距離魔法戦闘を元にしたとはいえ、撃てる魔法の選択肢は狭いし、最低限内蔵にダメージが通らないように多少悪手である《シールド》を張ったものの、身体的にも少なからずダメージを負っているから負担の懸かる魔法は撃てない。

 その少ない選択肢から選んだのは

「《ファイアーボール》」

 ありがちな初級魔法による反撃の平凡な手。だが、それは直線的ではなく曲線、或いは蛇を描くようにナガサワへと着弾しようとする。が、かわされてしまう。だがそれでいい。そしてもう一度

「《ファイアーボール》」

 今度は直撃させる。

「?!おっと、危ない、危ない」

 直撃の仕組みは《ファイアーボール》の弾道、着弾を全て偽装させた。直撃していない様に見えて直撃している。直撃した《ファイアーボール》はナガサワの視界を遮る。魔力探知能力が低下しているのは俺だけではない。今のこの場は初級魔法なら偽装魔法と本当の魔法の軌道が分からない位に魔力が乱れている。

そして黒煙が晴れない内に

「《ブースト》!」

 鞘から長剣を抜き、足をしならせて、近接戦闘距離まで持ち込み、一気に畳み掛ける。

 クロスレンジは突撃型の適正距離。

 刺突が、寸でのところで押し返される。

 金属の音が響き渡り、訓練用長剣が根本からポッキリと折れる。

作中でも語られているようにネルラントは個人の戦闘能力は非常に弱いです。チートなのはナガサワの方です。

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