狂信者と手入れ1
結局、魔物の肉の処理について何も聞けなかったし、空間を造る能力であったり、謎が深まるばかりで進展は一歩もなかった。
肉の一片でもあれば解析できたかもしれないが......後の祭りだ。
やはり、夜道は一人で歩くに限る。考えに整理をつけるには丁度いい。
一人は少し淋しくもあるが、反省と思考の整理をするには最適の環境だ。
ただの強がりとも言えなくはない。
寮に帰ったとてやることはある。
銃の手入れである。僅かに採掘できた原油から精製した鉱油とホウ砂と布巾を使って。
銃身命数はメッキ甘かったり、鉄鋼の純度の関係であったりで、オリジナルよりも命数が少ないのは確実だ。
魔石を使い、付与魔法で多少の延命をしているが、一万発を越えると精度が″がた落ち″するのは火を見るより明らかだ。オリジナルでさえ、適切な清掃をしなければ場合によっては3000発を越える前で寿命が来てしまう。
これがこの時代の限界だ。造ったものと、時代、そのギャップの代償と言える。
オーパーツと言えば聞こえは良いが、工業力なんて概念がない世界で造った工業製品、替えの部品や、適切な手入れがなければすぐガラクタになってしまう。
それに加えて根本的な冶金技術の低さから本来的には起こる筈がないトレードオフが起きた。
一品物というわけでもないが、それでも大量生産には向かないことは間違いない。




