狂信者とカンベル伯爵2
「おい、ネルラント!しっかりしなさい!」
「すみません父上」
「疲れているのか、なら休んだ方がいい」
「いえ大丈夫です、少し考え事に耽っていただけです」
「本当か?念のためにメイドを一人寄越そうか?」
「いえ結構です、それにこの後、友人の夕餉に呼ばれていますので」
この期に及んでメイドの干渉を受けたくない。それにナガサワに説明するのも面倒だし、権威主義、貴族ということを過剰に意識させていらぬ警戒心を招きかねない。
それで思考盗聴でもされて、ナノマシンの中身でも見られたら......と思うと生きた心地がしない。
ナノマシンの中には計画の全てが入っている。弾道演算処理、高度戦術リンクシステム、思考補助及び制御システムなど、エトセトラエトセトラ。
これをナガサワに読まれると計画の犠牲者が増えかねない。
アイツがそういった事に興味があるかどうかではなく、機密漏洩の可能性があるからである。
そしてアイツはその計画のおぞましさを理解できない可能性がある。
理解ができない故に人に話して凶悪な事件を引き起こす。軍事関係でも時折そういった事が起きている。
「では、行って参ります」




