狂信者とカンベル伯爵
「おお、そうだな。分かった、俺の部屋で待ってる」
一旦離れてカンベル伯爵の所へ向かう。
「ネルラント。上手くあの場を納めたな。よくやった」
といって頭を撫でられる。
「父上。やめてください。恥ずかしいです」
マジで恥ずかしい。地球とこちら側を合算しなくてもそうされる様な年齢は越えている。
その事情を話している暇が無かったのも事実だが......それを言ったとして変わるのだろうか。
「これ以上やると軽蔑しますよ」
「すまなかった。まあだがこれも課程の一環だ、許してくれないか」
そういわれると押し黙るしかない。
特別士官課程。表向きは国軍省直属特別魔法大隊の任務......つまり優秀な子供を魔道士として軍事教練を積ませることになっているが、本来は逆だ。
兵士として軍人として、忠実過ぎる、感情の起伏を殺されて、ほとんどない状態にされた、計画の被験者に情操教育を仕込む課程。
尚更、俺にその課程をさせているのか謎である。
抑揚はあるものの、感情のこもらない声で、常々おあつらえ向きの笑顔をしてはいても、感情はある。
帝国のささやかな贖罪でもある。
そしてそれは地方の村人であったり、商人だったり、といった人達に被験者を預ける。
もちろん厳格な人格審査をした後にだ。
結果として、感情の起伏が著しくなったということはなかったが、それでも多少はそういった言葉を零す事もあるようになった。
現在もそうして里親と親交が続いている者が殆どだ。
そして、ある程度の時間が経てばその事実が里親に知らされる。
洩らせば機密漏洩の罪で官吏に捕まってしまう、はっきりと言うならば、機密情報管理に関してはガバガバだ。
この国の戦災孤児に対する里親制度が充実しているのはそういうことである。




