狂信者と決闘1
そして放課後。
既に入学式が終わったにも関わらず、多くの人が闘技場に集まっている。それどころか休みであるはずの上級生までもがそこにいた。
政治的な意味合いのある、この決闘にはやはり貴族、庶民も関係なく興味がそそられるらしい。
貴族側が勝てばそれは学校長は謝罪するに至らないまでも、立場は一気に弱まり、貴族側の生徒の悪行が多くなるだろう。逆に庶民側が勝てばこの学校にある、不文律や、庶民側の生徒に対する差別や侮蔑は″なり″をひそめるだろう。
その他にも庶民の増長を許してしまうと行く先は......革命である。革命というのは一見すると良い様に思われる。
しかし、革命は要らぬ殺生や無駄な混乱を伴う場合が多い。
フランス革命の時にも優秀な学者が処刑された。国王ルイ16世についても最近は、評価が反転している。
マリーワントアネットに関して言えば本国ではさほど悪い人物ではなかったとの意見が強い。
もちろん、それは時代が追い付けば国を変える良い結果を生み出す、が今はその時ではない。
さて、この戦いはどうやってもナガサワが勝つだろう。つまりは貴族生徒には少々風当たりが強くなる事は覚悟しなければならない。
ナガサワと対するはグランツ子爵。
孫の入学式でも見に来ていたのだろうか。
女帝派の人間で前皇帝派に対しては穏健だが、それ以外については過激も過激、自らの領地をコミュニズム派、デモクラシズム派の商人や、旅人等が通ると言った時には子爵がわざわざ自らの暗殺部隊を以て殺した程だ。
今回のこの事に噛みつくのも納得である。
「両者準備は良いか!」
「待ってくれ、一つ提案がある」と言ったのはナガサワ。
まだ雪どけしたばかりの春だというのに、俺の額から厭な汗が滴り落ちる。
何をする気だ、ナガサワ・ハルト。頼むからややこい事をせんといてくれや。
ここにきて、ナガサワからの提案。
まず、事態が良い方向へ向かうとは考えられない。
グランツ子爵ひいては貴族派の感情を逆撫でするような発言をするとしか思えない。
俺がこぼした発言が完全に裏目に出たのか、ナガサワの目には自信が満ち溢れている。
直感的に感じる、これは学校に大きな禍根を残すと。




