狂信者と特定外来生物
「こんばんは」
「こんばんはナガサワ。お前も眠りつけないのか」
「ちょっとね......話を聞いてくれないか」
「分かった」
「俺は異世界から来たんだ。とはいっても信じられないだろうな」
「そうなんだ。それで?」
「信じてくれるのか?!」
「内容は聞いてから信じるかどうか決めるよ。進めて」
「その世界は魔法がなくて科学............雨が降るのはなぜか、夏が暑いのはなぜか。そういった事を詳しく調べて、その極致に至った世界なんだ」
「例えば魔法を全てその科学というこに置き換えた世界?」
「そうだ、その世界の日本と言うところに俺はいた。その世界では奴隷がなくて、平和な世界だったんだ」
やっぱりか、いろんな情報から判断して薄々感じてはいたが......面倒くさい。
確かに日本に奴隷と呼ばれる身分階級はなかったが、それに準ずるモノはあったがな。
「良いところだな」
「う、うん。でも、学生をしていていじめられていたんだ。トイレをしているところに水を上から掛けられたり、汚い言葉で罵られたり、何もしていないのに殴られたり」
「それは酷い!どうしてそうなったんだ」
「分からない。だけど俺はそれに耐えられなかった、だから自殺したんだ」
「えっ、そんなっ!そんなことになるまで人の身体と心を痛め付けてナガサワは怒らなかったのか!!」
「怒れなかったんだ、怒っても馬鹿にされるだけ、そうして大して力もないのに反抗して、その後もっと傷つけられて......」
「そうか......嫌な事を思い出させたな」
そうして俺は泣く振りをする。
意志薄弱な軟弱者が、とは思う。それすらマシだと思えるものを俺の前世の友人は耐えきっていた。それか俺の前世の友人は相当な精神の持ち主か、それともコイツが弱いのか。
「いや、俺が話をしたんだ。気にしてないよ」
「話の腰を折ってすまなかった話を続けてくれ」
「ありがとう、それで俺は女神に会った。神様って本当に存在するんだと思ったよ」
「ああやはり、神は存在なさったか」
「あぁ、とても優しかった。それでその女神様にチートを貰ったんだ」
「チート?」
あくまでも現地人ロールプレイングをする。クソッタレの神が、俺の時は何も言わずに、何も与えずに転生させた癖に。
「うーん、簡単に言うととんでもなく強い力かなぁ、それで俺は魔力が多くなるチートと、武力が強くなるスキル、そして、人の心を読めるスキル、言語が自由に話せるスキル、無限にアイテムを収納出来るスキル、そしてもといた世界の物について調べることが出来るスキル。人の能力を見ることが出来るスキル......もっとも見ることが出来る数値は参考程度のものだし、相手が俺より強ければ見えないけど......まあ、こっちでは祝福っていわれてる」
チートか、特定外来生物め。巫山戯るな。強い力等という言葉で済ましてはいけないチートである。
武力が強くなるとか言うてる時点でナガサワハルトの頭も相当なアレ。




