狂信者の致命的失敗
「美味しかったね」
「確かに旨かった」
「やっぱりクラネの知ってる店にはハズレがないですね」
「いえいえ、それほどでもありません」
「もう夕方か......そろそろ帰るか」
「そうですね。そうしましょう」
次はどこへ行こうか、何をしようかをあーでもない、こーでもないと談笑しながら寮へ帰る。
「では私達はここで」
「では」
「ああ」
そうして別れた後
「いやー今日は楽しかったよ」
「そうだな」
「明日はどんな所に行こうか」
「明日も行くのか......そんなことばかりしてると馬鹿になるぞ、ここへ遊びに来たんじゃない。学校の授業を受けに来たんだ」
「例えだよ。例え。頭が堅いなぁ」
「そんなことで授業ついていけるのか」
「じゃあ問題を出してみなよ」
「じゃあ、x^2-4x+4を因数分解せよ」
「(x-2)^2だけど習ってないよね」
「チッ!バレたか」
「大人気ない......まあともかく勉強は大丈夫だよ」
「そうか」
「それは置いておいて、今日一日君を見ていて分かった事があるんだ」
「なんだ?」
「君は皇女殿下に好意を抱いていない。そうだね?」確信を持ってそれを言っている、懐疑的なだけならまだ躱すことができたがこれでは確認しているだけのようだ。
やっぱりバレたか。ならコイツに用はない。
街の貧民街で死んだことにしよう。
大丈夫、帝国軍に協力してもらえばいい......とはいえバルトールはその飲み込みの早さや、商人としての才が垣間見れるのでここで殺してしまうには惜しい人材だ。
隠し持っていた三十年式銃剣を取り出し首筋まで持っていこうとする。
「ち、ちょっと待ってくれ」
「なんだ。遺言なら聞かんが」
「取り敢えず、その物騒な物を仕舞ってくれ、話もなにもあったもんじゃない、僕たち友達じゃないか」
「友達か。お前が逃げないという保証はどこにある」
「......まあ良いや。それについて僕は何も関与しない、首を突っ込まない!」
「そうか......なら良かった」
「そうかい、理解してくれたかい。良かt...ガッ」
やはり人は信用しきれない。




