狂信者の料理2
レタスの傷んだ皮を剥がして洗い、適当な量を皿に盛る。
そして、きゅうりを洗って、テナに包丁を借りて手際よく、薄切りにしていく。
料理自体は受験勉強の時にもしていたので包丁の扱いは手が覚えている。
そして、混ぜてサラダを並べて夕餉の準備が終わる。
「ありがとうございました、ネルラント様は貴族なのにお上手ですね」
「お世辞はやめてくれ、普段からしているテナの方が上手い」
「そんなことありませんよ」
「これは?」
俺は机の上にある、見慣れた、とある調味料を差して言う。
「それは、ハルト様が独自に発明した、マヨネーズって言うんです。しょっぱくて酸っぱくてサラダにかけると美味しいですよ~」
独自に発明したのか。偶然の一致にしては出来すぎているような気がするな。もしナガサワが転移者で、地球の物を独自に発明とか言うのであれば、あまり感心しないが。
「そうなのか......ナガサワはこれをどこかで売っていたりするのか?」
「あぁ、魔王国で売っている」
「うちの国では売らないのか」
「うーん。まあね」
そんなこんなで三人で表面上は楽しく夕餉を食べる。
「じゃあ帰るよ、さようなら」
「ああ、さよなら」
そうして自分の部屋へ戻る。
ハルト・ナガサワ。ナガサワ・ハルトか、その人物を評価するのであれば、世間の台所事情を知ろうともせず、自らの価値観で善悪を語る独善的な人。
あまり好かれる人物ではないだろう。
しかし、メイドのテナは彼に惚れている。行動の節々からそれが伝わってきた。吊橋効果か、それとも強力な催眠術か、それとも本当にその人格に惚れたのか。
いづれにせよ要注意なのは間違いない




