狂信者の買い物1
さて、かなりの時間を無駄な思索に費やしてしまった。
夕餉の食材を買いに行くか。大青銅貨10枚日本円に直せばおおよそ1000円。市場は学生が多いのか賑わっている。この服装は......少々場違いなようだ。
「お姉さん、そこの鳥肉のもも二つと卵ちょうだい」
「あら、お姉さんなんて上手ね大青銅貨1枚、小青銅貨6枚でどう?」
「はい、大青銅貨2枚」
「小青銅4枚のお釣りね」
「ありがとう」
「アンタ、貴族様でしょ」
「ええ、まぁ」
「こんなところに何をしに来たんだい」
「夕餉の食材調達ですね」
「アンタ料理はできるの」
「大方出来ますよ」
「凄いわね......ここらに来るのは大抵庶民の学生かメイドさんが殆どだからねぇ。学校の庶民派と貴族派の争いは緩いけど一部の人は厳しいから気を付けてね」
やはりここでも貴族と庶民の争いはあるようだ。
「そうですか、ご忠告ありがとうございます」といって一礼。
「若いのにしっかりしてるわねぇ」
「いえ、それほどでも」
そして突然、割り込む人がいた。
「あのー、ネルラント様でしょうか?」
「ああ」そういえばどこかで見たことがあるような......だめだ記憶力が悪いせいで思い出せない。
「クラネ・ヴェールです、マリア様の専属メイドの......」
思い出した、あの時偉そうな説教をしてしまったメイドか。
「三週間ぶりだな。あの時は勝手な事を言ってすまなかった」
「いえ、私こそあのような無礼をしてしまって」
「なんだ、アンタ達知り合いかい」
「ええ、以前ネルラント様が私の主人を訪ねて、そこで知り合ったんです。ね?ネルラント様」
「え、ええ。それで少々話をしたんです」
「へぇーそうかい。それで、クラネちゃん今日は何を買いに来たんだい?」
「卵を二つお願いします」
「小青銅貨8枚ね」
「はい」と言ってクラネは小青銅貨8枚を渡す。
「丁度ね、まいどあり」
「では俺はこれで」
そうして立ち去ろうとするとクラネが止める。
「待ってください!」
「どうした?」
「良ければ一緒に夕飯食べませんか。この前のお礼です」
「遠慮しておくよ、そもそも女子寮は男子禁制だろ?」
「それは......」
「またいつか誘ってくれ。その時はどこかで三人で一緒に食べよう」
「はい!分かりました」
良くある断り文句を言って、クラネと別れる。




