狂信者の考察
この国での成人は19歳。それには政治的背景が関係している。
約六百年前、まだ帝国が共和国であり領土が今よりも大きかった、デウス教ができてすらいなかった頃、元々成人は20歳だった。そして、元老院と市民会が共和国を支配していた。
元老院と市民会は政治的闘争を行いそれは内戦に発展した。その内、領土の幾つかは離反し、独立して現在の形になった。そして一時期は独立した新興国家や魔王国に追い詰められて南方の港町ネルロに閉じ込められるも現女帝の始祖ヴィシェフラト・ハローネが国内を纏め上げ、残存勢力は正面から敵主力を撃滅した、その際に皇帝が19歳、未成年が国を纏めたというのも体裁が悪いということで成人が19歳になったらしい。
この話には嘘が含まれていると考えている。そもそも残された資料から見るに敵主力を撃滅出来る軍の規模と士気ではなかった。勝つ手段があるとすれば焦土作戦をして、敵主力の補給線を襲撃し、疲弊させ、そこで降伏勧告を行い、従わなければ撃滅。あるとすればそれだけ、それを齢19の少年ができるかといわれると疑問符がつく。おそらく優秀な軍師がいたのだろう。
これらは完全に俺の妄想だ。だが、資料から見るに、農業の戦後復興は特に苦労したようだ。資料には「焼け野原になっている、これを今の財政でどうやって直せと言うのか」と当時の官僚の愚痴が殴り書きされていた。
この国の税は大人が税を払う事になっている。この税は時代が進むにつれて減っていったそうだ。これは当時から変わっていない。農地も焼けて、沢山の人が死んだ、そこへ財政難である。少しでも財源確保に動く為に、成人年齢を引き下げたのではないかと思う。
「歴史とは権力者によって左右される、か」
そう呟いたところで、学校を後にする。




