謁見と極秘任務
宮城に到着する。
まずは衛兵さんに″ご挨拶″だな。
「何者だ」
「国軍省直属特別魔法大隊......」
「女帝陛下の『子どもの兵隊ごっこ』か、通れ」
国軍省の内部的には表向き、有望な子どもを宮廷魔道士への早期育成をするための機関となっている。その為、蔑称に近いあだ名がついた。
「ご協力感謝します」
さて、女帝陛下に謁見しますか。
幾つかの時間が過ぎると謁見の場に通される。
「ご機嫌麗しゅう女帝陛下、本日はお日柄もよく......「ご託はいいわ、応接室で話をしましょう」
「分かりました」
最悪だ、ここでは話せないということは殊更極秘案件という事である。戦場で土嚢積んでる方が楽な位にしんどい。
応接室に通されて
「よくきたわね。良いニュースと悪いニュースがあるけれど「悪いニュースからで」
「チッ下らない。まずは悪いニュースについて、貴方の次の任務が決まったわ」
「大隊ではなく?」
「ええ。その点についても説明するわ。現在の情勢において皇族は非常に重要な政治の道具」
「自分で言うかそれ......」
「そんなことは百も承知。それはともかく、私の腹違いの妹は判る?」
「何だったか戴冠事件で旧皇帝派の王位継承権第二位今は一位。歳は確か......」
「貴方と同じくらいね。その子を″保護″して欲しいの。試製指揮型識別番号C2?」
「......識別番号で呼ぶな。それで?」
「まぁまぁ、そんな怖い顔をしないで。そういえば貴方はまだ特別士官課程受けてないわよね?「必要ないと言った筈でしたが。能力的にも問題無い程度には」
「貴方の存在は既に盤上の駒。動きを考えて」
「つまり皇女と学校へ通えと」
「察しが良くて助かるわ!それから良いニュースだけれども貴方の望んでいた物が出来たらしいわよ」
「それで現物は?」
「爺やここに」
「はっ!」
そして、爺やと呼ばれた執務官はそれを持ってくる。
「歩兵銃と銃剣でしたかな?」
「そうです。ありがとうございます」
渡されたそれは防腐剤の匂いが強く艶止めも新しい。
地球の歴史においてもこの時期には開発されていない場違いな物体。魔法杖にしても長すぎるが、槍にしては短いそれはかつて明治三十八年式歩兵銃と明治三十年式銃剣と呼ばれていた物にほぼ等しかった。
「これで貴方に頼まれた物はあとは大砲の修理だけね。それと今より二週間の準備期間を与えます。それまでに帝立ヴィタメール学校への入試対策、そして二週間後に入試を受けて合格する。そして貴方はカンベル伯爵......カンベル軍務卿と言った方がいいわね、その養子ネルラント・フォン・カンベルとして振る舞い、寮暮らしをしてもらう。何か質問は?」
どん!と渡された分厚い資料......恐らく入試対策書であろう物が机に置かれる。
「......ない」
「宜しい。口先だけでなく自分の行いで結果を示してね。でも今まで不可能を可能に変えることが出来た貴方たちには造作も無いことだと私は信じているわ。期待しているわよ」
「そうですか。お褒めに預かり光栄です」
そうしてその資料を家に持ち帰る。