狂信者とメイドの答え
部屋の外には例のメイドが待っていた。
「......」
「館の外まで案内してくれ」
「......承知致しました」
「さっきの答えは出たか」
「......分かりません。ですが私は私です、マリア様に拾われました、その恩には報いたいとは思います。しかし、それはマリア様と一緒に────」
「それ以上は言わなくても良い」
彼女なりに考えたのだろう。これでもしも、命令を忠実に守る僕とか、友達のように接すると言うならばもう少しヒントをあげなければいけなかったがその心配は杞憂だったようだ。
要は適切な距離を保つ。主人に仕えるメイドとして、求められた者として。
「正解でしたか?」
目には期待と不安が半分ずつ見える。そんな期待と不安にありふれた解答しかできないが、これが皇女殿下と彼女に良い影響を与える事を願おう。
「............これは受け売りだがモノの良し悪しは今この場一面的な見方でしかない、それが正しいかは後の世が決める。現在を生きる者にとってはそれが正義で、真実でそれ以外は悪で、嘘だ。人生に正解なし、王道なしだ。それぞれの生き方がある。すまない、偉そうに語ってしまった」そんな事言える立場に無いのに語ってしまう。
その価値観で語るならば俺は現在、後世、主観、客観どれから見ても間違いなく悪である。しかし、それがもうどうでも良くなってしまった。これもまた悪癖である。さて、何が返ってくるか。




