狂信者と皇女殿下2
「終わりました、もう入って来てください」
「分かった」
部屋の中へ入る。
「かなり待たせてしまったようですね」
「いや、そこまで待っていません」
「敬語でなくて良いのですよ」
「分かりま......分かった。これで良いか」
「よろしい!では、これから貴方には姉様との連絡係を頼めますでしょうか」
「何度も危険を冒してあの場へ向かうのは出来れば避けたい」
「連絡といっても私的なものではありませんし、それに連絡頻度も高くありません」
バランス取り、か
「安定化の為なら悦んで」
「ああ......ありがとうございます、貴方にはなんと申して良いか分かりません」
この様では任務の事を全く話していないようだ。まあその方が却って本人が意識することなく、ストレスフリーに暮らせるか。これも女帝陛下なりの気遣いだろう。
「それでは一つ聞きたい、外にいる奴隷、なぜ首輪を外しているのかを」
「なぜそれを」皇女殿下は目を見開く
「本人が外で盗み聞きしようとしていたから問い詰めたら話してくれた」
「それは......私は友達が欲しかった。心から通じ合える、友人がッ、皇女としてではなく、一人のマリアとして見て欲しかった」
その結果が奴隷を買うというのは正しい判断ではないように思える。それはお金で買った買われたの関係であるからだ。金の関係に友情が生まれることはごく稀である。
「でも、そうはいかなかった。殿下と彼女には階級的隔たりがあり、それは心の壁でもあった......と」
皇女殿下は首肯する。正直、この手の話は扱いが難しい。それに俺も皇女殿下との距離もはかりかねている。
兎にも角にも皇女殿下の思っている事も半分は間違っているが半分は正解している。あのメイドは皇女殿下に救われたが故に尊敬し、信奉している、感じているのは尊敬による壁だろう。ならばあのメイドから答えを聞くのみである。
「了解しました、解決の糸口を預けましょう。そこから先は状況を生かすも殺すも殿下次第」
「分かりました」
「では私はこれで」
「お見送り致します!」
「いえ、結構です。これ以上余計な事をすると外堀を埋められかねません。それにまだ涙で晴れていますよ」
「......分かりました」
そういって部屋を出る。思えば結局敬語に戻っている。
ストックが......




