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国粋主義の狂信者  作者: AAKK
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狂信者のお仕事10

 2月10日ビシェフラト平均太陽時22:00

 無詠唱で獣人の戦車部隊、歩兵部隊へ向けて放った一筋の《シグナル》。便利な無属性魔法だ。

 信号弾と弾道が同じでかつ、込めた魔力の量次第で自由に明るさと音を調節できるので、ある程度の使いやすさを持つがそれ以外の無属性魔法というのは、使うにしても何かと一癖ある特徴を持つ属性だ。

 力加減が苦手な俺にとっては、あまり積極的に使いたいモノでない。

 それは大きな曲線を描きながら、吊光弾のように、不完全な灯火管制の敷かれている前哨基地の全容を照らし、一瞬その周辺は昼のように明るくなる。

 電探に引っ掛からない地表ギリギリの高度を指定して、飛行させておいた輸送龍隊がここぞとばかりに高度を上げ、植物油の入った樽が敵基地の全体にバラ撒かれる。

 高度200mから投下されたそれは特段発火する事なく、重力に従って落下し、音を立てて壊れる。

 事前の情報より明らかに少ない。ただV号戦車(パンター)Ⅵ号戦車(ティーガー)はエンジンが弱い。

 これは鋼材の質の問題ではなく、エンジンの大元設計からして、設計者の想定外の事が起きている。

 あの時代に戦車に搭載できて、()つその力をいかんなく発揮できるパワーパックを作るというのが無理な話だ。

 まあそこを改良せずにそのまま使ったのだろう。素人め。

『状況開始。予定通り乙部隊は敵前哨基地を()()せよ』

 その合図と共に闇夜に紛れた乙部隊が獣人族に対して更に追い討ちをかけるように魔法を乱れ撃つ。《突撃型》の特性を生かした魔法の乱射乱撃によって生じた激しい光と音が中途半端な暗さと静けさに慣れていた者に対しての効果は絶大。

 ましてや五感が人の何十倍も敏感と言われる獣人では鼓膜が破れるような感覚が継続するだろう。

 それでも有刺鉄線を飛び越えた乙部隊に対して、機関銃の掃射をかける者もいた。

 むさ苦しい咆哮と血のにおいがする。嫌いやなぁ。いつまで経っても慣れない。それに加えてトラウマ(硝煙のにおい)が漂っている。

 ホログラムディスプレイの光点が幾つか消えて、幾つかが点滅している。何人かやられたようだ。すぐさま丙部隊を回収に向かわせる。

 余りにも派手に魔法を放ち過ぎているせいで夜空が昼のように明るい。そうかと思えば

『《大隊長》より甲部隊。全門斉射っ!」

 その瞬間、隠れていた野砲から放たれた砲弾が暖気運転中の戦車群に襲いかかる。

『着弾、今。誤差修正急げ』

 あるものは外れ、あるものは側面に当たってその表面硬化装甲を砲口径の暴力で破り、あるものは天板を楽々と貫いて、又あるものは正面装甲を叩き割る。そうして至近弾以外の野砲を修正させる。

『《大隊長》より一番砲、修正俯角1度、四番砲仰角5度、七番砲方位-4度、八番砲方位6度。修正次第各個自由射撃始め!」

 そうして修正のない砲からまた砲弾が吐き出される。

 今度は全弾命中。当たった戦車はもれなく戦闘不能、そして大きな火花が散り、戦車の中にはビックリ箱の様に砲塔が派手に飛んだものもあった。

 それから十秒も経たずに火の手が広がり、基地の全体像が映し出される。

こうなればその灯りを利用した弾着観測ができる。目が慣れているとはいっても旧日本海軍の見張り員ではないのだから、やはり明るい方が目は効く。弾道演算と距離の概算は《指揮型》本分である。

一応、他隊員でもデータは取れるが、早く正確にするならば連携した方が良い。

それぞれに次目標の距離概算と射撃の修正案を送る。瞬時で(おびただ)しい量の電文が飛び交う。それを捌き、適切な指揮や、データを弾き出して送信しつつ、無電で指示を出す。

 その直後、八、十番砲の光点が点滅、新たに大きい反応が二十、それを囲むように小さな反応が約百。マズイっ!

『《大隊長》より丙部隊。八番砲、十番砲。通信途絶。敵は戦車二十台、歩兵100人《突撃型》より六十名、《中距離連射型》から三十名、《長距離砲撃型》より三十名抽出。現場に急行』

 一安心も束の間、落ち着きを取り戻しつつある前哨基地から戦車や歩兵が部隊行動を取りつつある。とはいえ撃っている弾は歩兵に撃つ意味の薄い高速徹甲弾(APCR)だったりするが。

 突然、ジェリコのラッパが鳴り、甲高いジェット機特有のつんざくような音がドップラー効果を起こしている。

 夜間戦闘型のMe262B-1a/U1とJu-87か。電探を使った爆撃をしに来たのだろうが、気をつけていれば爆撃に当たることはないだろう。

 しかし、侵攻の邪魔なのは確かだ。急ぎ全砲に仰角を伝えて撃墜命令を出す。対空砲弾なんて便利な物はないので榴弾である。

 敵機の数とそれぞれの担当空域を割り当て、未来予測位置を出力する。

 榴弾といえど、当たればどこであっても竜の外皮よりも頑丈な金属板であっても例外なく、紙を殴り破いたように大穴が空き、墜ちるだろう。

 俺は指示を出しつつ、その砲兵の代役として三八式を構えて約三キロ先の機関銃手を狙う。銃を固定するバイポットも土嚢もない。

 左足を曲げて寝かせ、右足を立てて、左腕の上に小銃を乗せる。スコープがある訳でもなし、この距離では照尺も意味を成さない。射程からいってもかなりギリギリだが、魔道演算装置を使い、ニューロンネットワークを強制的に活性化させてデータ算出し、引き金に指をかけ、撃鉄を落とす。

 鈍い発裂音。弾は緩やかな曲線を描いて、落ちて行きながら空気を切り裂く。二秒弱の時間を経て到達するも、その身体能力で避けられるが、その隙をついた《突撃型》の魔法に当たって倒れる。

『《突撃型C275》より《大隊長》敵部隊撃破。損耗率6%、残存部隊の追撃を行う』

『《大隊長》より《突撃型C275》了解』

『丙部隊より《大隊長》負傷者及び遺体の回収完了』

『了解。負傷者は応急手当の後、野戦病院へ。遺体は私的装飾品、ドッグタグを一旦外し、火葬。戦死者の名簿をつけることは忘れるな』

 次々と撃破と負傷者及び死者の情報が入ってくる。案外と戦車は制圧できるもので、既に乙部隊がⅤ号戦車、Ⅵ号戦車合わせて八台の撃破、Ⅴ号戦車一台の鹵獲の報が届いている。なお、内部構造には粗が目立ち、性能はオリジナルより少し劣るということだそうである。

 戦況は我が方優勢。ただ予断を許さない状況だ。

 後から入ってきた情報だが、八番砲はⅤ号戦車の75mm砲が積んでいた弾薬に直撃し、ほぼ全損。近くにいた隊員も即死、飛び散った肉や骨が熱で砲の残骸にへばりついたらしい。十番砲は幸いにも弾薬への誘爆は無く、損害軽微なものの修理が必要で現在、八番砲の残骸を使って何とか撃てるように応急修理中。

 十番砲の隊員に関しては一人が75mm砲弾が直撃。一瞬にして細切れの肉塊に、その他にも砲弾の破片が頭や心臓に刺さったり、想像したくもない。八番砲、十番砲合わせて重体1名、重傷4名、軽傷3名。半数が残った分まだマシといえるだろうか。

 一通り指揮を出し、また狙撃する。今度は戦車の車長を狙う。大体、戦闘中に頭を外に出しているのはNG行為である、素人というか、流石に()()()で″浅い知識の素人″が超短期の訓練の新兵の指導。

 マトモな事になる筈がない。むしろここまで運用できるのは敵ながら天晴れといいたい。

 その後も少しずつ敵を減らす。

 そうして敵を殲滅していく。今回は流石に尻拭いの意味合いも込めて一人たりとも逃さない。再生産されるだろうが、それまでに兵力の空白期間を創らせれば交渉で優位に立てるだろう。

 突如として西から耳をつんざくような咆哮が聴こえ、初速845m/sの徹甲榴弾(APHE)がすぐ横を掠める。

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