狂信者と懇親会
そして会場へと向かうとスペンサー伯爵が立っていた。
「ご機嫌麗しゅう、マックス・フォン・スペンサー伯爵、このような素晴らしい会への招待、とても光栄に思います」
「これは丁寧にネルラント・フォン・カンベル″子爵″、御家とは今後とも仲良くしていきたいね」
伯爵の子供は子爵を名乗れる。まあそういう訳で一応爵位を持つ、実験動物から貴族とは大出世だなと任務ながらに思う。
「まだまだ若輩者ですから子爵はやめてください、私の事はどうぞネルラントとお呼びくださいませ」
と営業スマイルで対応する。
「そうかい、Mr.ネルラントでは懇親会を楽しんでくれたまえ、隣にいるのはバルトールかい、いつの間に仲良くなったんだ?」
「市場で散策をしていたところに話し掛けられたんです、良い野菜を売っている所はどこかと」
「バルトールはそれでどう答えたんだ?」
「ウチの商会で売っているものですと答えました」
「ハハハッ、バルトール君はフロスト男爵に負けず劣らず商売上手だね」
「ありがとうございます」
「では商売上手のバルトール、Mr.ネルラントをエスコートしてくれたまえ」
「分かりました、スペンサー伯爵」
あちらも営業スマイルなので恐らくは懇親会というよりは懐柔策が近い。
「スペンサー伯爵とはやっぱり親しいのか?」
「ああ、ウチの一大スポンサーだからね、他国と貿易するときの護衛も出してくれるから頭が上がらないよ、それに付き合いも古い、僕も小さいときはよく相手してもらったよ」
「そうか、ちなみに前皇帝派だったよな」
「大丈夫、まだ穏健な方だから」
「そうか」
そんな話をしていると開会式が始まる。壇上にはスペンサー伯爵が立っていた。
「さぁ、帝立ヴィタメールの厳しい試験を無事に乗り越えた紳士淑女様、お集まりいただき大変感謝しています、今回は懇親会ということで、各国の料理を取り揃えています、最後に王位継承権第一位マリア・ハローネ・クロイセン皇女殿下よりお言葉を頂きます。皇女殿下、こちらへ」




