添付:当時を語る貴重な資料
当時の軍事的記録を示す物として有名なのが第一次ブレスト会戦を描いた『魔軍』である。帝国軍の阿鼻叫喚とそれを圧倒する魔王軍について誇張気味に描かれたこの絵画は帝国図書館の禁書庫に長い間飾られていた。一説によれば、帝国の傲慢不遜に対する戒めとして置かれたと考える学者もいる。この絵画を移動させるときに、その裏から発見された文書が通称『魔軍文書』と呼ばれ、謎であった当時の魔王軍の装備についての詳細と、その残虐性について書かれている。尚、文書の一部は、第二次ブレスト会戦に触れられている。以下はその内容である。
帝国軍北方第一軍はいつものように魔王軍への警戒を敷いていた。休日であった訳ではない。
ただ、この時には丁度ヴィタメールでテロ事件が起き、その対応に追われていた帝国政府はやむを得ず、ブレスト防備の一翼を担っていたブレスト辺境伯の軍をヴィタメールに向かわせた直後だった。
突如として国境線の森より鉄で出来たらしい火を吐く怪物が耳が痛くなるような音を立てて、ブレストの砦に配置された弓兵を一瞬にして薙ぎ倒した。
僅かに反撃した者が居たがその努力むなしく、矢はその硬い皮膚に弾かれるばかり、かと思えば空からは数種類の怪鳥が、けたたましい音を出しながら、糞か何かを落として砦の中心部にあった城を爆破し、粉微塵にしてしまった。
次に、怪鳥が火を吹き、残っていた弓兵以外の兵隊もばたばたと倒れていった。
動くものは殺される人間の無力さを知った。それからの私の行動は素早く、屍体の下に隠れた。
そうして怪鳥が去った後、先ほどの怪物がキュルキュルキュルキュルという金属が擦れ合うような奇妙な音を立てて、砦の壁を破壊し、そのまま私の真上を通っていった。意外にも私は冷静であった。
極度の恐怖と混乱は却って、冷や水を掛けられたように落ち着いている。
怪物は我が物顔で壁を破壊していった。全ての敵兵が去った事を確認し、ようやく事態を把握した私は全力で逃げた。怪物の上にちらりと獣人が見えたが気にかける余裕もなく、森の中を進んでゆく内に忘れてしまった。だが、それがいけなかった。怪物の一匹が、近くを通りかかったのだ。偶然かと思い、気づかれないよう息を潜めた。
そうしてしばらく近くを探索していたが満足したのか、怪物に乗り込んだ。それを見て、私は一刻も早く帝国まで逃げねばと焦燥感からつい、小枝を折ってしまった。
パキッ。そんな小さな音ですら獣人は拾う。
そうして私は捕らえられた。
捕らえられた相手は砦を攻撃された時に怪物へ乗っていた獣人であった。
その獣人は回りの獣人に何かを言い、子供が面白い遊びを見つけたように、ニヤリと笑い、私を殴った。何発も。当然、獣人は人間よりも力が強いのですぐに気絶させられた。
気絶している間に目隠しをあてられて、両手両足を縄で木に括られ、そこから更に何度も嬲られ、火炙りや爪剥ぎなどを常時され続けた。その時の私といえば廃人一歩手前の状況まで追い込まれ、いつ終わるのか、ただそれだけを考えていた。
しばらくして、パッタリと拷問が止まった。
目隠しがあったが、遠くの方で大きな光がでていた。慌ただしく獣人達は怪物に乗って去っていった。
奴らが去ったことによる安堵とまた来るかもしれないという恐怖。しかし、恐れる必要は無かった。
その後、直ぐに、子供達に救出され、後方の病院へ送られた。はて、あの子達は何者なのだろうか。




