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国粋主義の狂信者  作者: AAKK
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狂信者と不換紙幣

自分でも完璧に理解できているとは思いませんが一応自分なりに分かりやすくしたつもりです。分かりにくければコメントしていただければ改善します。

間違っていれば指摘お願いします。今回は特に間違いやすい所ですから、罵倒しつつでもOKです。

「まあ最初に言っておくが、これは人伝に聞いた話だから嘘や誇張があるかもしれない。まず、魔王国内で新たな魔王が就任したらしい。恐らくは前王がこの前の北方戦役でしくじったから、その責任追求と、新王を決めるための議会が開かれたのだと思う」

 北方戦役では魔族は魔物を使役して過去最大の規模の軍勢で攻めてきた。こちらも特別士官課程にいる人員を全て引き戻して戦った。帝国軍も学徒動員をして、貴族からも最低限の防備を残して私兵を全て北へと集中していた程だ。その甲斐あってか侵攻を防いでこちらが逆に国境線を北へと押し上げた、魔王としては過去最大級の人員を動員しながら、攻めるどころか逆に押し返されたのだから面目丸潰れだろう。

「それは、何となく予測できるが......それが何かしたのか?」

「それが魔王国の戴冠式を見た人が言うには人間が王に就任したそうだ」

「?!確か魔王国の伝統は一番強いやつが王に成る筈......前 王は魔族、その前は獣人族だったよな、魔族と言えば単体ではエルフ以上の魔力と竜人族以上の力を持つ、それを抑える人間なんているのか......」

 竜人族と言えばその力と頭脳から歩く戦車(チャリオット)とも呼ばれる存在だ。どちらかと言えば戦車(チャリオット)より戦車(タンク)の方がより適切とも思えるぐらいの頑丈さ、攻撃力、速度を持ち合わせていると言えるが......

 魔族はもちろんその分頭は良くなく、並の魔族なら10人程度の魔道士で殺せるのだが。一人でとなれば突撃型は勿論の事、中距離連射型、長射程砲撃型ですら難しい。

「僕もそんな人間がいるとは考えにくい、もちろんたまたま魔族の尻尾と羽が見えなかっただけという可能性もある」

「それだけなら特に注意すべき点はないだろう」

「それでね、それを記念してか、魔王国の通貨が変わったんだ」

 そうして一つの長方形の紙切れが目の前に置かれる。

「これは」

「紙幣というものらしい。これが宝石貨、金貨、銀貨に成り代わってお金になるらしい」

「それは金や銀と交換するための券か」

「それが違うみたいなんだ、通貨の代わりとして使われるんじゃなくて、そのまま通貨として使われるんだって」

「......それで商人たちは混乱しないのか?」

「混乱したけれど意外とすぐに収まったみたい、新魔王が今持っているお金の1.2倍の価値で交換すると言ったらしいね」

 そんな事しても結果的に物価上昇が起きるので価値は変わらない。インフレを起こすだけだ。

「対外通貨を回収して紙切れを国内で流行させる、か」

「上手い手だね、紙は大量につくれるから実質的な費用は小さく済むし、紙切れは今のところどの国も信用しないから、魔王国内でしか通用しない。だから、紙幣を持つ商人が国外へ出ることもほとんどない、他国とは今まで通り硬貨で取引されるから、自然と国が貿易を制限できる。しかも、手にいれた宝石貨や金貨の量も馬鹿にならない。凄い、手品みたいだ」

「が、交換できない紙切れ......不換紙幣を扱うということはそれだけ紙幣の量にも細心の注意を払わなければいけない」

「量?」

「貨幣を改鋳をするときと同じだよ。それでももっと繊細な操作を要求されるがな、例えば銀であれば銀の含有量が悪ければ多く銀貨を支払わなければならない、でも全く含有量の同じ銀貨なら今日も明日も同じ価値をもつ」

「不換紙幣はどうなるんだい」

「これも例えばだが、戦争が起て不換紙幣の大量発行を行う。この際、物の値がつり上がっていく。これは硬貨も同じだ。だが硬貨にはある物が不換紙幣にはない」

「紙は金や銀よりも安く、ほぼ無限に生産できるから......!」

「無限に物の値段が上がり続けてしまう。だから例えばの話だが、本物との見分けがつかない紙幣が大量に出回ると国が滅ぶし、国が不安定であれば不安定であるほど紙幣の価値は際限なく下がり続ける、そうすれば魔王国の破滅だけでなく、その魔王国の地域における経済を破壊する威力を持つ」

 前に述べたように最もこれはメリットでもある。紙切れをお金と認識してくれるのだから政府としてはそれだけで安上がりだ。まあ新魔王がバカでないことを祈ろう。魔王国が滅べば今までそこに向かっていたヘイトがこちらにも向くようになる。魔族も必要悪なのだ。

 それに、魔族は確かに人間から見れば猟奇的かも知れないがそれは人間の尺度である。価値観の違いだ。そして、バカの一つ覚えのように魔王を信じる。これもまた価値観の違いである。

「でも魔王国紙幣は付与魔法がついているとか......」

「確かに、付与魔法はその個人によって差違があるし、魔族や魔力はなくても魔法を″見る″力のある獣人族が多い魔王国では問題ないか、それにこの魔王国紙幣には小さく文字が印字されているし、透かしもある......?」

「どうかしたかい?」

「いや、何でもない」

 それにしてもこれも転移、転生者が関わっているのか?しかも、この巧妙さは日本のお金と同じレベルだ。魔王が転移、転生者か、懸案事項がまた増えた、か。

「おーい。おーいってば、大丈夫?」

 不安げな表情でこちらの顔をのぞいてくる。

「あ、あぁ大丈夫、少しばかり将棋の新しい戦法を考えていただけだ」

「そうかい、それなら良かった」といってフロストは微笑む。

「もうすぐで着くか。今回も情報提供ありがとう」

「どういたしまして、お代は出世払いでいいよー。たんまりと貰うけどね」

「相変わらずがめついな」

「それほどでも~」

「帝国大銀貨5枚。ほら」

「出世払いでいいっていってるじゃん」

「貸し借りそれはあまり作りたくなくてな」

「今後ともカンベル伯爵家がフロスト商会をよしなにしてくれるだけでいいよ」

「そうか、ならそうしよう」

「ありがとう」

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