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国粋主義の狂信者  作者: AAKK
115/169

狂信者と魔法実技21

 「精霊よ、我に力を貸したまえ。結界 《フレイム・サラマンダー》!」

 今から20秒後に魔力が切れる、おそらくそれで俺は倒れるだろう。魔力量は精神力とニアリーイコールの関係であるからだ。今日は既に一度倒れている、それから考えても魔力切れで立てやしないだろう。

 それまでにケリを着ける。

 要は、20秒後に負ける、だからそれまでに勝つ!

           20.00

 轟々と燃え上がり、皇女殿下と俺の周りは炎に包まれ、周囲の気温は急激に上昇する。

 《マジックスミット》の″気配″は消え失せ、魔力波は乱れる。

 予定調和。

 これまでの相手のように言葉を交わすことは一切ない。

 言葉の代わりに返ってくるのは《アイスバレット》の連射。

 それを躱しつつ、結界を使って追いつめようとするがそれも織り込み済みか、すぐに距離を取られる。

           17.26

 ならば魔道書を″飛ばす″。

 魔力で飛ばした魔道書はファンネルのように殿下を完全に捕捉している。魔道書の利点だ。魔法の威力低下と魔力の大量消費の代償として交戦距離をある程度調整できる。

 《ファイアボール》を″魔道書″から発射するが軽やかに躱される。戦いを愉しんでいるようだ。更に火力を増して、俺は追い詰める。

           06.42

 結界発動中に魔法を撃てば制限時間が短くなるのは当然な訳で。だが、予想より消費が多い。これじゃあ20秒も持たない。ならば早めに仕掛けるのみっ!

           02.59

 とうとうクロスレンジまで詰めることができたが杖術に阻まれる、マズイ。杖術もかなりの腕だ。

 このままでは俺が負けるっ!

 ならば敢えて躱さずに更に距離を詰める。こうなると杖を躱す事も難しく、こちらも長剣で受けるが訓練用のそれでは杖にすら押し負ける体たらくで精神力的な問題もあって、若干押され気味であるが遂に、絶好のチャンスができた。

 皇女殿下の杖が僅かに外へ逸れたのである。これを逃せば俺は負ける。

 剣をかなりの速度で打ち合っているのにスローモーションかのように遅く感じる。遅い。後少し、後少し速く剣を振れば俺の勝ち()()()っ!

           00.21

 長剣を首まで持っていくにはコンマ数秒もいらない。







           00.00

 首に長剣はなかった。あったのは剣身を止める手。負けた......負けたのだ。齢13の少女に......ナガサワに負けたのとは訳が違う。

 「ま、負け......負けました」震えた声でそういって視界が真っ暗になる。最後に聞こえたのは皇女殿下の勝利を祝う歓声。

 複雑な気分だ。

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 はっと目が覚める。思考を巡らそうとして


 「おはよう、ネルラント」

 視線を上げた先に居たのは───


 「ば、バルトール?!なんでここに?」


 「まあまあ、落ち着いて。まず、昨日はお疲れ様、クラス最強決定戦の準優勝おめでとう。やっぱり君は強いよ」そう言われた瞬間、悔しさがどっと溢れ出た。拳をぐっと握りしめてしまう。  

 やはり皇女殿下の優勝とクラスが団結した安堵よりも負けてしまった事が心へダメージを与えてしまう。

 「そんなことはない..................それで今日の授業は!?」

 「特例で君は休みだって。君は昨日、魔力切れを二回も起こしているね?」

 「ああ、そうだが......」

 「知っているかもしれないけど、魔力切れを頻繁に起こすと体内の魔力回路が″荒れる″んだ」

 魔力回路が荒れる、か。魔力回路というのは魔力が体を循環するときに通る血管のようなモノ。

 魔力はそれ自体を体に留めることが難しい。

 ならばどうやって人は体内に空中より密度の高い魔力を保持しているのか。常に魔力の波を体内で循環させ、外に逃げないようにしているのである。その回路が壊れると魔法を発動できなくなる。普通の人になってしまう。

 それが元に戻るには十年単位の時間が必要だ。ゆっくり、ゆっくりと長い時間をかけて回復していく。

 ともかく壊れると大変だ。

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