合格報告と任務その2
そして、次はカンベル伯爵家へ向かう。
「カンベル軍務卿、ネルラントです、入試の結果報告に来ました」といって軍務卿の私室のドアをノックする。
「入れ」
声色から察するにあまり機嫌が良さそうではない。
「失礼します」
室内には本棚から溢れんばかりの本と二つのソファと一つの机があった。
「そこに座ってくれ」
「はい」
「ネルラント、早速で悪いがこれは何だ」
といって詰めた荷物の中にあった小瓶を机に置く。やっぱりか。
「精神薬ですが」
「正直に言いなさい」
「麻薬ですが何か問題が?戦場で臆病風にふかれて、役に立たず、更迭されるよりは、冷静に戦場を見て、勇ましく戦う方が軍人としては優秀ではないのですか、それに一般の兵も使っているモノですし、軍規に当てはめれば問題ではありませんよ」
麻薬が見つかるだけなら問題ない。全く同じ色をしていてもっと危ないものもある。
まあ、こういう時に日本語でラベルを書いているお陰で全て同じ麻薬だと思われているようだ。
「ネルラント、お前が今から行くのは学校だ、血と鉄の匂いが濃い戦場ではない」
どうやら合格の件はハルカトより聞いていたようだ。
「ですが謀略の渦中にある場所は戦場と変わらないのでは?」
「......麻薬に頼る体質が問題だと言っている」
「綺麗事で済むなら、前線の兵は泥水を啜って疲れながらも進軍するような戦争は起きませんよ、お偉方が化かしあい的外交のカードのとしてそれをお選びになるのでしょう」
「子供の身体にこれは害悪だ、それに法では禁止されている、その危険性を知っての事か、それが結果的にお前自身の命を削る事になっていてもか」
「そんなことは百も承知です、国家の安定が金で買えるなら安い、一人の命で買えるならもっと安い、それなら私は悦んで命を差し出しましょう、どこの部隊が師団長までを失うほどの犠牲を払って内戦を終わらせたのか軍務卿が一番ご存じの筈ですが」
「............分かった。しかし、使用頻度は控えなさい。それと私の事は父上と呼ぶように、息子に軍務卿と呼ばせるのは体裁が悪い」
「分かりました。父上」
「それとお前の欲しい資料を揃えておいた。それとネルラント、お前の部屋も準備した、今日はゆっくり休むといい」
「ご協力ありがとうございます」




