狂信者と魔法実技10
「《ファイアーランス》」
そうして切り札を切る。中級魔法、今の俺にできる精一杯。追尾の術式を加えた《ファイアーランス》はサディーニャの方へ向かい直撃するかと思われたが、軽々と紙一重のところで、避けられる。
そしていとも簡単に目の前まで迫られるそして─────────予想通りかかった。
彼女の手足は拘束される。
「どういう魔法を使ったの......」
《トラップ》だと言うことを答えて、剣を抜いて降参を促す。
俺は《ファイアーランス》の発射と同時に《トラップ》を直ぐ近くに仕掛けた。
複数の魔法を無詠唱で発動する──いわゆる多重詠唱を、補助演算処理装置を、使わずに実行のは流石に脳が焼ききれそうなぐらいに辛かったが、それでもギリギリなんとかなった。
本来多重詠唱というものはそこまで負担になるものでもないが、これは単純に脳のスペック不足、補助演算装置の不使用と無詠唱、多重詠唱と複雑なモノを使いすぎた結果である。
「お見事としかいえないわね......貴方の魔法の使い方は」
単純に魔道士としての格上から褒められるというのはあまりいい気がしない。
時間が立てば、俺という単体は魔力量で押しきれるモノなのだから、魔法以外の小技でなんとか勝利しているのを魔道士に褒められるというのは当たり前の事をして褒められるようなものだ。
嫌味ったらしく受け取ってしまうのもあまりいい気がしない一番の要因だとは思うが。




