狂信者と魔法実技9
「試合開始!」の合図。
瞬く間に、音もなく、距離を詰められる。
マズイ。素直に距離を取るしかない。
「《ライトニング》」「《ブースト》」
俺とサディーニャの声が重なる。視覚には雷魔法である《ライトニング》の蒼白の閃光とそれによってもたらされた赤い火花が見えたかと思うと、皮膚がヒリつくような熱さと痛さ、そしてバチバチという音が後から来る。
かすったものの、まだ戦える。
「......チッ!仕留めそこねた!」
やっぱり今の一撃で決める気だったらしい。
疾きこと″雷″の如し。サディーニャという少女はまさにそう言っても申し分ない程の速さを持っている。
つまりはアホほど速い。
捉えられない、捕捉した頃には目の前だ。
雷魔法というのも厄介だ。
発動が他よりも比較的に早く、魔法による加速も侮れない。
尤も、サディーニャの加速は魔法ではない、加速に使われる雷魔法特有のバチバチという反応もなく、かといって《フルブースト》の最高速度である100km/hよりも格段に速い。恐らくだが、あれは魔力塊を纏い、限りなく摩擦係数を0にしている。魔力を纏って移動する時は常に魔力を放出しなきゃいけない訳だから俺が使おうとするもんなら保って1秒。それを使えるのだから魔力量は常人の数十から下手をすれば数百倍あるのではないだろうか。
雑に言うならば《フルブースト》の強化バージョンといったところ。
他に世界の法則があるのなら違っているのかもしれないが、現状の知識とデータを照合すればその状態しかない。
そりゃ近づく時も無音になる訳だ。後ろをとられれば気付かずやられるに違いない。
そしてそれを使いこなせているのは脅威だ。
これをどう仕留めるか。
そうこうしている内に、彼女はまた仕掛けてくる。ならばっ!
Merry Christmas世間はすっかり″せいなる″夜に入っていますね




