1話 ありがちな展開は求めてません
「マリア……起きろ」
んん、ぐっすり寝てたのに……
あれ?マリアって、私の書いてる小説の悪役令嬢の名前?締切も近かったし疲れてるのかな、昨日無事最終章まで書き終えて後は編集者さんに渡すだけなんだよな、ほんとよく頑張った。
「マリア、起きなさい」
あ、この声ドンピシャだ、私の思い描くマリアのお父さんの声にぴったり。いつかアニメ化とかしたら声優はこの人で決定だね。……でもこの声の主が分からないや。
「マリア!起きろと言っているだろ!?」
「おはようございます!!」
反射なのかなんなのか分からないがベッドから飛び起きる。
……ここは、どこ?ふかふかすぎるベッドにネグリジェ、私ネグリジェなんてオシャレなもの人生で1回も着たことないよ?
しかも今年で25になるおばさんがこんなフリフリのネグリジェなんて……
「体調が優れないのか?顔色が悪いぞ」
「えっと、大丈夫、です」
この人、私の書いてる小説に出てくる人じゃん。挿絵のまんまじゃん。
てことは、この人が私のお父さん?……いやいやいや、そんな訳ない。
だって私は25歳独身一人暮らして、お父さんは私が小さい頃に私とお母さん置いて蒸発したはずだし……
「お父、様……どうしてここに」
「どうしてって、9時には会場に向かうと言ったのに8時になっても起きてこないからだよ」
「……申し訳ありません」
「いい、別にまだ時間はある」
「お嬢様、お目覚めになられたのですね」
「ベス、」
私の前に現れたのは「ベス」と呼ばれるマリアの使用人だ。
くせっ毛な神とソバカスが特徴の……てことはやっぱり私、自分の書いた小説の中に転生したってこと!?
嘘でしょ!?だってマリアって言ったら悲惨な目にあう悪役令嬢で、私が作りあげだ完璧な当て馬よ?
私、これからどうなっちゃうわけ?