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まさか俺が送っているの!?

作者: 煙巻 太貫

俺は伊勢貝転生いせがい のりお「伊勢貝運輸」の代表取締役だ。


代表取締役とは言っても、社員は俺だけという小さな会社ではあるが迅速・丁寧・安全をモットーにまぁそこそこ生活はできているといったところだ。


今も急に運送を頼まれたパーツをお得意さんである社長さんに届けに来たところだ。


「いゃあ〜〜ノリちゃん助かったよ、メーカーさんに言われてパーツがないと気付いた時には青くなったけど、なんとか間に合いそうだ。」


「そりゃよかったっスよ、でも今回はホント超特急で持ってきたんで割増お願いしますよ。」


「わかってる、わかってる、こんだけのモノをこんだけ早く持ってきてくれるのはノリちゃんくらいだからさ、でもいつも思うんだけどよくこんなに早く持ってこれるよね、何か危ないことしてたりするのかい?」


「とんでもない!!社長だって知ってるじゃないですか、俺がヤンチャしてたの、そん時に走り回ってどの時間のどうゆうルート行けば一番早く行けるか頭に入ってるだけですよ、今はお預かりした荷物を丁寧・安全をメインに運んでますからね、迅速は一応モットーに入れてますけど、そこはまぁ才能ってところですよ。」


「そうか、いやぁ〜『ノリちゃんが運転してるトラックにぶつかると、どっか別の世界に行っちゃって証拠が残らないからガンガンぶつかって走ってるんじゃないか?』なんてウワサがあったりするんだよね〜」と社長は「こ〜んな与太話があるんだけど」と言った感じだが、俺は一瞬ドキリとして血の気が引ていた。


「やめてくださいよ〜ホントこの名前には困ってるんですから、まぁ死んだ親父が『いくら転んでも生きていけるように』って付けてくれたってことで、今あるのもこの名前つけてくれたからかなと感謝はしてるんですがね。」と内心冷や汗をかきながら勤めて軽い調子で答えた。


「社長、そろそろ次のお客さんところに行かなきゃ行けないんで失礼します。」


「ああっ分かった。また頼むよ。」


「はい、今度は少し余裕を持ってお願いしますよ。」


「ほい〜ノリちゃんそんじゃ。」


「毎度です。」


得意先の社長の冗談でドキリとしたのは他でもない、この仕事を始めた時から配送中に度々何かおかしなこと起きるからなのだ。


おかしなことというのは、配送している時に何かにぶつかったと思って止まるのだが、何故か降りて周りを見ても何も残っていないしトラックにも何も跡が残っていないのだ。

しかも、そういう時に周りに何もないのを確認した後トラックに乗り込むと何故か配送先近くの場所にいるのだ。


何がキッカケかはわからない、しかしそういうことが起こる前は何故かいつも走っている道なのに違和感があり、さっきもその違和感を感じてしばらくした後、女子高生らしき子とぶつかってその子の服装や顔まではっきり見てしまい「今回は流石にやってしまった!!」と思って急停車、そして降りたらまた影も形もなし、でトラックに乗り込むとやはりご近所にいたのだ。


とりあえず「また例のか」と思い荷物を届けて、その後はそのようなこともなく1日が終わった。

そして、あくる日そのまた次の日と何事も起こらず件の現象は「まぁ緊張して走っているから幻想でも見ちゃうのかな」と思いつつ過ごしていたある日の事、フト書店に新刊マンガを買いに行った時のことだ。


最近の書店の売れ筋はやはりコミックで、書店の本棚の4分の1、下手をすると3分の1は本棚を占めている、そして近頃マンガと並んで本棚を占めつつあるのがラノベという本だ。

俺はほぼマンガ専門でよくは知らないのだが、ライト・ノベルとかいう軽く読める本というのの略らしく、出版社に勤めている元同級生曰く、今本が売れないご時世で軒並み売れているということで、ラノベを原作としてコミックやらアニメもあるのでフト「なんかコミックの原作置いてたりするのかな〜」ということで、眺めてみることにした時だ。


コーナーの売れ筋案内で「今大人気、異世界転生モノ!!」という派手なPOPがあり、どんなのが置いてあるんだろうと見た瞬間、俺は凍りついた。


何と、先日ぶつかったと思った女子高生と同じ顔・同じ服の女の子が堂々と表紙になっており、帯には「異世界に転生した女子高生、アイドルとなって寂れた異世界の田舎を救う!!」とかなんとか書かれた煽り文句が書かれていたのだ。


後頭部に、ヤ〜な汗を掻きながら「まぁ、偶然は怖いなぁ〜〜」と思いながら並べてある他の表紙を見てみると、これまた以前同じようにぶつかったと思ったが、やはり降りて見たらたらいなかった青年が「異世界に転生した青年、科学の力で魔王軍に無双」とか「異世界転生筋肉美少女、チートな筋肉でモンスター狩り」辺りの筋肉少女は、ぶつかった時にかなり前方がひしゃげてどうしようかと本気で焦ったが、やはり降りてみると何ともなかったのをハッキリ覚えている。


「まっ、まさかなっ」と少々焦りながら一冊手に取り出版日をみた瞬間、しばらく自分の頭の中が真っ白になってしまった。出版日は自分が配送時に起きたおかしなことのあった日だったのだ。


これはどういうことだ!!!俺の頭で色々な考えが巡った「まさか俺が本当にぶつかって異世界に送ってしまったのか!!」とか「そんなことはない!!出版日というのは本が発売される日なんだから話はその前にできているはずだ!!」とか色々思考がぐるぐる回ってしまい店員さんに「お客様ご気分でも悪いのですか」と言われてようやく我に返ったのだ。


とりあえず、マンガを買って書店を後にしてぶらぶら歩いて帰っていたのだが、色々考えてこういう結論に達した。

「もしかしたら、例のおかしなことは本当に誰かを異世界に送っているのかもしれない、だけどまぁなんか行った先では順調そうだから、まぁいいか」

初めまして煙巻と申します。キッカケはこのツィート https://twitter.com/sisiodoc/status/1294475711672020992 を見て、ちょっとコメディもしくはショート・ショートの雰囲気で書いてみたらこうなるのかなと思って、ザッと書いてみました。おそらくツッコミどころやら色々あるかと思いますが、生暖かい目で見守ってやってください(汗 

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