ダンジョン経営、お助けしますよ。
とある町の路地裏に、小さな店が立っていた。
看板には『ダンジョン経営、お助けします』の文字。
店のカウンターには痩せぎすの男が立っていた。
男の元へ、一人の若者がやってきた。
――なになに? ダンジョンを経営してみようと思ったが、地下迷宮を掘るのが面倒くさい?
そんなあなたには、この魔法のツルハシがお勧め! 地面に突き立てると、あっという間にお望みの地下迷宮が出来上がるでしょう。
痩せぎすの男は笑って応えた。
しばらくすると、再び若者がやってきた。
――なになに? 地下迷宮はできたけれど、今度は侵入者を捉える罠が欲しい?
そんなあなたには、このインスタントトラップがお勧め! 迷宮のあちこちに取り付けるだけで、ランダムな罠が生成されるでしょう。
痩せぎすの男は笑って応えた。
しばらくすると、再び若者がやってきた。
――なになに? 罠は沢山増えたけれど、今度は配下の魔物を捕まえるのが大変?
そんなあなたには、この魔法の捕獲機がお勧め! 適当な餌を入れておけば、それに応じた魔物がわらわら寄ってくるでしょう。
痩せぎすの男は笑って応えた。
若者のダンジョンは、複雑な仕組みの地下迷宮や悪辣なトラップ、そして恐ろしい魔物に満たされた。
若者は喜んだ。これで俺もダンジョン経営ができるんだ! と。
それから数日後。
若者はダンジョンの中で命を落とした。
彼が作った迷宮も、トラップも、魔物も、彼も思い通りにならなかった。
複雑なダンジョンは容易に脱出する事が叶わず、仕掛けたトラップは若者に牙をむき、そして集めた魔物は彼自身の言う事を聞かず襲い掛かってきた。
こんなはずじゃなかったのに。
そんな後悔を抱くも、時すでに遅し。
若者は彼自身の作った迷宮に殺されたのだ。
――ああ。また死んでしまいましたか。
近頃は、自分の手に負えないレベルのダンジョンを作るような輩が増えましたねぇ。一体何に触発されたのやら。
まあそのお陰で、こちらも商売繁盛ですが。
ではでは。残った貴方の魂は、死神である私が頂きましょう。
若者の死体の隣で、痩せぎすの男が笑った。